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MRJ と Pratt & Whitney PW1200G

2014-10-23

つい先日も機体公開でメディアでも大きく取り上げられたMRJ。

 

税金も大量に投入されたまさに国策の一つですね。
単独でプライベートジェットの機体とエンジンをやろうとする本田技研工業とは色合いが違うというのも面白いところです。


さて、あまり前面には出ていませんが、MRJの機体に搭載されるPratt & Whitney社のPW1200Gについても、やはりFRPが適用されています。


MRJでいうと垂直尾翼や水平尾翼、Pratt & Whitney社のPW1200GではFANという一番前でまわる翼を囲むようにいるFAN caseとよばれる部品などです。

 

開発初期の頃はMRJも主翼を含めてFRPにすると言っていましたが、FRP適用範囲をだいぶ絞りましたね。

 

B787の認定におけるFRP主翼試験で多くの問題が起こって(ハードランディングの試験で、主翼の付け根が損傷したなど)、
認定が遅れたということを考慮したのかもしれません。私個人的には三菱重工の判断は正しいと考えます。

 

こういう戦略変更なども、FRPの適材適所を物語る好例ではないでしょうか。


MRJの尾翼は、東レと一緒にaVaRTM(advanced vacuum asisted resin transfrer molding)という、
繊維を先にふけいしておいて、その中を減圧にした状態でマトリックスとなる樹脂を流すという工程を取り入れるなど、
FRP業界でも注目の内容を取り込んでいることも注目です。

 

大型部品になるほどFRPの強みである軽量化のアドバンテージがでますが、逆に繊維に樹脂を含浸させたプリプレグとよばれるものを使う場合、
積層にとても時間がかかるというデメリットも出てしまいます。
(いまだに多くの業界で手貼り。航空業界の大物はロボット化に成功した工程もあるが、細かい積層は人の手が必要。)

 

この積層時間を短縮させようというのがVaRTMのメインコンセプトですが、当然VaRTMも技術的には簡単ではなく、繊維の中に樹脂をきれいに含浸させるためには樹脂の粘度を低くしなくてはいけない、角部や形状部といったところまで樹脂を含浸させるために樹脂の逃げ道をつくる、樹脂をまんべんなく含浸させるために樹脂の注入口を増やすなど、様々な工夫が必要です。

 


そして、MRJに搭載するPratt & WhitneyのPW1200Gというエンジンも、FAN caseはFRP製です。

 

有名なところではGEはエンジン一番前の回転翼FANをFRP化しています。

 

今空を飛びまわっているGE社製のGE90を搭載したBoeing社のB777や、同じくGE社製のGEnx(Rolls Royce製のエンジンの場合もあります。購入する航空会社が選べます)を搭載したB787など意外に多いです。


今度飛行機に乗った時にエンジンを見てみてください(なかなかみないですよね…..)。一番前の羽は黒色のはずです(いわゆるCFRPで、炭素繊維の色のため黒)。ただし、羽の一部はFRP製の羽を守るため金属(Ti)のプロテクターがついています。

 

 

そして、間もなく出るAirbus社のA320neoに搭載するPratt & Whitney社製のPW1100GはFan CaseとSGVというFANの後ろにある静翼もFRPです。しかもこれらは日本のIHI(石川島播磨重工業)が開発したもので、日本のFRP技術が高いレベルにあることを示しています。

 

 

最後にFRPとは少し関係ありませんがMRJに搭載するPW1200Gのことについて少しだけ追加です。

 

PW1000シリーズ(PW1100、PW1200、PW1400、PW1521/1524)はすべてギアドファンシステム(Geared FAN system)を採用しています。

 

これは、一番前にある回転翼FANの回転数をギアで落とす一方で、その後ろにある低圧圧縮の回転数をギアによって大幅に上げることで、
高効率かつ低騒音のエンジンとなっています。


このため、MRJは燃費が良い、という事を売りにできるのです。これは15年近くPratt & Whitneyがじっくり研究してきたからこそなしえた新規技術です。


加えてMRJの機体設計もシミュレーションを用いて最適化するというCAE(Computer Assisted Engineering)を適用し、客観的な設計を効率的に行う試みをしたようです。

 

 

すこしFRP以外の話も書いてみましたがいかがでしたでしょうか。

 


MRJの受注も400機を超えてきたものの、ボンバルディアなどのライバルが先行する厳しいリージョナルジェット業界。

 


日本国民としても何とかMRJは成功してほしいですね!

 

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