Toho Tenax の高生産性熱硬化性マトリックス樹脂ベースのCFRP
世界をけん引してきた日本のプリプレガーである"Toho tenax"が、異方性と等方性(ランダム配向性)の両方の技術を合わせたFRPを発表しました。
プレスリリースはこちらです。
http://www.teijin.com/news/2014/ebd141029_55.html
Part via Preform(PvP)とよばれるこの技術は、プリプレグを作るのではなく、種々の配向性(異方性や等方性)を持った強化繊維(発表されたのは炭素繊維)にバインダーとなる接着剤をつけたもので、繊維をセット後にRTM(Resin transfer molding)で樹脂を充てんするようです。
この技術の面白いところは、等方性を有し、複雑形状の成形にメリットがある一方で、強度をはじめとした物性や外観のばらつきという弱点を持つランダム配向と、安定した極めて高度な強度という物性という強みと、複雑形状成形や異方性に欠点のある一方向材をうまく組み合わせようとしているところです。
このような、材料設計によって構造材の特性を発揮しよう、というのは世界的な材料メーカーならではですね。
非常に素晴らしい材料であると考える一方、本当にものにするにはあと一息といった印象です。
当然ながら、最終的な構造体の設計要件は、設計したメーカーしかわからず、そのデータをToho Tenaxに公開しない限りは、きちんとした材料設計はできないからです。
材料メーカーは材料製造のノウハウは出したくない、部品メーカーやアッセンブリーメーカーは、製品の肝となる設計を開示したくない、ということで、材料メーカーと部品メーカーやアッセンブリーメーカーの間には、見えない壁が存在しています。
この壁こそが、FRPの本格活用への大きな障害の一つとなっていると考えています。
もちろん、各社の抱える頭脳部分を不必要に公開することに対してはあまりにもリスクが高いのは間違いないので致し方なのですが、上述したような障害も存在していることは理解しておかなければなりません。
では、これをどのようにして克服するか、という事については、材料メーカーは部品の設計能力を上げ、部品メーカーやアッセンブリーメーカーは材料開発を行う選択肢を持つことが重要であると考えます。
お互いが、異業種に歩み寄ることこそ、両者のギャップを低減し、お互いの強みを最大化する切り札となることでしょう。
この動きの具体例が、NCC(National Composite Center)や東京大学に、企業や研究機関、大学の技術者や研究者が業界をまたいで終結しているといえるのではないでしょうか。