高耐熱 ビスマレイミド FRPの発表
高耐熱材料の代表格である" ビスマレイミド "をマトリックス樹脂とするFRPが、帝人グループで炭素繊維・複合材料事業を展開している東邦テナックスから発表されました。
ニュースリリース:http://www.teijin.co.jp/news/2014/jbd141106_00.html
「320℃以上の超高温下での使用を実現!」
をキャッチフレーズに、高い耐熱性および耐酸化性能を要求されるエンジン周りの用途に使用することができる、新しいタイプのビスマレイミドFRPであると述べています。
200℃台でもヒートクラックが起こらない320℃を超えるガラス転移温度(高分子物質を加熱した際に、ガラス状の硬い状態からゴム状の柔らかな状態に変化する温度)を示すと言っています。
さすがは、FRP材料業界を引張ってきた超大手。高い技術力を示す素晴らしい製品だと思います。
もちろん、 ビスマレイミド は昔からあったのですが、
「耐熱性の高い材料は脆い(もろい)」
という点を改善したというのが最大の売りのようです。
まずは航空機向け、とうたっていますので是非とも日本のFRP材料を海外の航空機、並びに航空機エンジンメーカーに採用してもらいたいものです。
ここで一つ注意しておかなくてはいけないことがあります。
ガラス転移温度ぎりぎりまで使用できるのだ、と勘違いされる方が多いのですが、FRPの主な形状維持を担っているのは高分子である樹脂ですので、当然ながら徐々にゴムライクになっていきます。
樹脂の種類にもよりますが、ガラス転移温度よりも100℃程度低い環境下でも強度、剛性が低下していきます。
そのため、常に振動の加わるエンジンまわりや、クリープ(ある一定の荷重や力がかかる状態)変形をする可能性のある場所でFRPを用いることは危険です。
疲労強度、クリープ強度といった部分をきちんと見据えたうえで寿命が十分であることを確認したほうが無難です。
さらに、環境にも左右されます。
特に高温多湿や、低温と高温を繰り返す冷熱サイクルは、水分に弱い樹脂の特性や線膨張の異なる繊維と樹脂の混合物であるFRPの形態の関係上、強度低下をもたらす厳しい環境です。
材料カタログに載っている物性値をうのみにするのではなく、実際に適用する部品の荷重、温度、湿度、繰り返し疲労の環境を十二分に考慮したうえで材料選定を行うことがFRP材料を用いた部品設計には必須です。
是非とも十二分のマージンをもっての設計をしていただきたいと思います。
安全こそが最上の設計概念であることだけは忘れてはいけないと考えます。