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FRP の Audi 6への搭載

2014-11-22

ポリアミドをマトリックスとする熱可塑性FRPの搭載を Audi 6 で行うというニュースがでました。

 

記事はこちらです。

 


もともとポリブチレンテレフタレート( PBT )やポリアミド( PA )といった材料を用いた自動車部品の製造、設計などを行っている世界的な企業であるLANXESSが、熱可塑性FRPの大手であるBond laminate社を2012年に買収し、両社の強みを生かして自動車部品への適用を広げていこうという事のようです。


熱可塑性FRPのAudiへの適用の目的は"軽量化"。


そして、様々な機能性を重視するAuidiだけあって、この軽量化によって装着されるTVチューナーの保持にFRPを使い、運転中の振動による疲労強度を考えることはもちろん、運転中にチューナーが振動しないよう、きめ細やかに設計をしたようです。

 

よく陥りがちな「材料で形を作る」ことだけを考えるのではなく最終アプリケーションまで考えられたのは、LANXESSのような材料部品設計メーカーだけではなく、最終製品を用いるAudiがこの部品の開発に深く入り込んでいることが大きな要因であると考えていいと思います。

 


実際に用いるのはBond laminate社が保有するポリアミド(6ナイロン)のTepex(これは商標です)を使い、強化繊維である連続繊維としてはガラス繊維を使っています。


圧巻はその製造プロセス。


材料送り機械によって型の中に入れたFRPを赤外線で加熱して形を作り、その表層に対してLANXESSのもつDurethan(これは商標です)のポリアミドをインジェクションで注入することで、外観とリブといった複雑形状部分をつくるとのこと。加熱を始めてから、インジェクションして、脱型するまで50秒程度と言われています。


ポイントは、材料の位置が安定するように入れたピンとインジェクションのマンドレル。


ピンによって材料位置が安定するうえ、インジェクションをするときにそのマンドレルが型内に入り込むイメージで樹脂を注入するため、型内の材料に対する損傷も少なく、何より成形物に対してきちんと圧力がかかると書かれています。

 

 

Audi はBMWとFRP使用ではトップを争っていますが、最近の傾向を見ているとBMWの方がかなり前に行っている印象です。


レースなどでは積極的に使っている Audi ですが、量産車にはそれほど多く使っていません。


そんな Aud iが攻勢に出たという動向ととらえられるニュースが今回ご紹介した内容だと思います。

 


FRPでニアネット成形するのではなく、複雑形状の寸法安定と外観を重視し、インジェクションで表層を覆うというコンセプトは非常に興味深いですね。


BMW i3を例にとると、車体などの大物FRPは少し多めに成形して、周りをウォータージェットで切り落としています。


どちらが良いのかという話はありますが、前者はアクセサリー部品、後者は一次構造材ですので、構造体として用いるのであれば基本的にはFRPにかなりの圧力をかけて加圧し、剛性と強度を持たせるという考えが正しいと思います。

 

エンドユーザーと成型メーカーと材料メーカーががっちり手を組んでものを作るというのは、今後FRP業界でトレンドとなっていくでしょう。

 


とはいえ、材料メーカーにしても成型メーカーにしても本当のノウハウは絶対に出さないはず。

 

そういう意味では各社が自領域を広げ、手を組むメーカーと対等なレベルで話をできるよう、技術力を挙げていくことが肝要だと思います。

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