構造部材用の高信頼性弾性接着剤( Gradient Adhesive )の発表
Fraunhofer Institute というドイツの研究機関から構造部材用の高信頼性接着剤 ( Gradient Adhesive ) が発表になりました。
FRPを実際の製品として使用する場合に不可避かついまだに確立されていない技術である「接着」。
金属を初めとした異種材料との接合を初め、FRPが苦手とする摩耗や耐衝撃といった部分を補うために接着は不可欠な技術です。
今日はこの接着に関するトピックをご紹介します。
Fraunhofer Instituteから発表されたこの接着剤の基本組成は明らかになっていませんが、加熱硬化と紫外線硬化(UV硬化)の2種類のタイプの硬化システムから構成されているようです。
発表された接着剤の最大の特徴は弾性。
いわゆるゴムとしての性質です。
接着剤は基本的には化学反応の主役である官能基の数が多い有機化合物を用いる場合が多いため、架橋反応の後、その構造が極めて剛直になる傾向があり、それゆえ応力集中が起こると破壊しやすいという欠点があります。
それに対して、Fraunhoferの接着剤は、
1.表層を熱硬化によって硬化
2.内部を紫外線硬化によって硬化
という2つのステップを経ることで接着剤の弾性を得ることに成功したと述べています。
さらに、この接着剤がFRPなどの軽量材料の接合に有利なだけではなく、弾性を有するため応力集中が起こりにくく、接着部の信頼性向上に貢献できる上、自動車などに使うと振動を吸収する、ダンパーとしての役割も果たせると述べています。
振動吸収にまで言及している所がすばらしいです。
最初に述べたように接着接合技術というのは極めて重要な一方、いまだきちんとは確立されておらず、航空機では接着部にファスナーというリベットで連結をバックアップしています。万が一接着部が剥離したとしてもリベットで最終的な連結部破壊を防ぐという考えです。
そして、今多くの現場で使われている接着剤も、そのほとんどが昔ながらのものが多いです。
理由は単純。
使われてきた実績という上に立つ、”信頼性”が担保されているからです。
Fraunhofer Institute の発表した接着剤が今後実績を積み、実際の製品に使用できるようになることを待ちたいものです。