TenCate が Kestrel Aircraft へのFRP長期提供に関する契約を締結
設立からあまり時間のたっていない、Kestrel Aircraft社の製造するターボプロップ機の機体に使用するFRPをTenCateが長期提供するというニュースが入ってきました。
今回TenCateが提供するFRPは、炭素繊維とエポキシマトリックスでできている、TC275-1という材料です。
以下のTenCateのプレスリリースにも書かれています。
使用されるといわれているTC275-1という材料について、少し見ていきます。
以下が、TC275-1のテクニカルシートです。
http://www.tencate.com/amer/Images/TC275-1_DS_101113_Web29-24442.pdf
硬化温度が135℃もしくは177℃から選べることから、バリュアブルタイプ(耐熱と高耐熱タイプの間)のエポキシ硬化システムを採用していると考えられます。
ガラス転移温度は183℃と、このタイプのエポキシにしては高めの耐熱性を示しています。
引張、圧縮、面内せん断といった物性値をみる限り、一般的な高強度中弾性のCFRPのようです。
際立って何かが高く、何かが低いというようには見えません。
ただし、High toughnessとうたっているのに破壊靭性に関するデータが一切のっていないのは気になります。
FRP設計をする際にはこのようなところまで気を配ることが重要です。
加えて、材料メーカーの公開している材料データはチャンピョンデータである可能性もあるため、必ず自分で材料データを取得することが重要です。
このTC275-1がKestrel Aircraftの機体のどこに使用されるのか明確には書かれていませんが、All Compositeと書いてあることから、かなりの部分をFRPにするものと予想されます。
以下が、Kestrel Aircraftのホームページです。設立から5年程度しか経過していないのがわかります。
Kestrel Aircraftのホームページを見ると、乗員は8人程度のプライベート、ターボプロップ飛行機とのこと。
内装をみる限りかなり高級感のある飛行機であることがわかります。
シートの質感や簡単なBarが設置されていることなどからもその様子がうかがえます。
ある程度の滑走路長さが必要なジェット機と比べて、より汎用性が高いターボプロップ機で、世の中の富裕層に売り込もうという作戦なのかもしれません。
Kestrel AircraftがなぜAll composite、つまり機体のほとんどをFRPにするという挑戦的な設計にしたのでしょうか。
これも推測の域は出ませんが、狙っているのは
「差別化」
であると考えられます。
FRPというのは軽量化を初めとした特性だけでなく、
「先進性」
というイメージが顧客の中にあるため、
「製品の付加価値」
という観点で用いることができる材料でもあります。
製造業に限らず新規参入企業において、製品の差別化というのは必須の戦略です。
Kestrel Aircraft社は、この差別化戦略にFRPを採用したのかもしれません。