FRP戦略コラム – 図面寸法公差 と実際の寸法値
FRP戦略コラムとして、FRP業界に参入を検討されている企業様向けにFRPに関する戦略を検討するにあたり、参考になると考えられる情報を不定期で掲載いたします。
今回のコラムのテーマは、
「FRP部品の図面寸法公差と実際の寸法値」
です。
FRP製品を試作するにあたり、どのような寸法公差を設定すればいいでしょうか。
クライアント様からきかれることのある質問です。
実際のFRP部品量産を行う前の試作段階で的確な寸法公差設定に関する知見を有することは重要です。
しかしながら、実は上の質問だけでは明確な答えは出せません。
というのも、作ろうとしている部品の寸法や形状、使用する材料、成形プロセス(オートクレーブ?プレス?RTM?)などによって、適した寸法公差の設定値というのは異なってくるからです。
ただし、私自身の実際のFRP量産経験を振り返ると、およその公差スケールは見えてきます。
あくまで感覚的ですが、一般的な「機械加工」の公差の5?10倍くらいあると概ね妥当な範囲と考えられます。
この場合の公差というのはFRPを二次加工しない、
ニアネット成形(簡単なトリミング[バリ取り]だけで形状成形が完了するもの)
の場合を想定しています。
もし、仕上げの一環として二次加工で機械加工を行うのであれば、この限りではありません。
この話を紹介すると、
「FRPは成形精度が悪いのか」
という印象があるのかもしれませんが、一度マトリックス樹脂の粘度が大きく低下する熱硬化性マトリックス樹脂である場合を中心に成形精度はかなりいいです。
何が問題かというと、実はFRP材料特性である
「異方性」
によって、成形後の部品がねじれなどの変形を起こすため、検査結果がばらつくことが多い、という事です。
異方性が少ないといわれる、
繊維がランダムな方向を向いているランダム材
を使うと変形はほとんどないのでは、というお話もうかがいますが、実際のランダム材料のFRP部品量産経験者としての私の答えは
「ランダム材FRPでも変形は起こる」
です。
製造による寸法ばらつき、というよりはFRP材料固有の異方性によって変形が起こる。
このため、
「検査結果自体にばらつきが生じやすい」
という状況になるのです。
CMMなりノギスなりで出てくる寸法が正である以上、寸法公差はこのようなFRP特性である異方性による「変形」も考慮しながら設定することが重要です。
FRP部品の図面において寸法公差を考えるにあたっての一助になれば幸いです。