三菱樹脂 と 三菱レイヨン の炭素繊維事業統合
業界の動きが加速してきています。
BMWなどにFRPを提供してこの業界で急成長を続ける三菱グループが、
世界的なPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維のメーカーである三菱レイヨンと、
ピッチ系の炭素繊維部門である三菱樹脂に存在する炭素繊維部門を統合して新組織を発足させるとのことです。
三菱レイヨンが三菱樹脂の炭素繊維事業を会社分割の方法で継承し、
2015年4月1日に新組織を発足させるようです。
http://www.mrc.co.jp/press/detail/20150107140959.html
高強度を特徴とするPAN系と高剛性を特徴とするピッチ系の両方を扱えるようになることで、
新機能を有する炭素繊維や、異なる種類の炭素繊維のハイブリットなど、
色々な可能性が広がることが期待されますね。
プレスリリースには、両社の抱える販売網を活用できることも魅力と書いています。
三菱レイヨンの試算によると現在7000トンの需要がある自動車向け炭素繊維の市場が、
2020年には25000トンに急拡大するとのこと。
BMWもMシリーズや7シリーズに本格採用をしていくことを公言していることから、
欧州を中心に燃費規制への対応の必要性も視野に入れつつFRPの需要が大きくなることは間違いないでしょう。
そもそもBMWは20年近く前から少しずつFRPを実際に使ってきているような自動車メーカーの中ではFRP使用の知見が豊富なメーカーですので、
BMW i3の登場は驚くべきものでもなく、7シリーズやMシリーズに採用していくという話も当然とみていいかと思います。
加えて今回の三菱が強いのは、同じ三菱グループにある三菱化学の存在。
エポキシ樹脂でいうと世界標準のjERシリーズをはじめ、ポリオレフィン樹脂など、マトリックスに関する研究開発、製造能力は世界屈指です。
つまり、炭素繊維を提供するのはもちろん、マトリックス樹脂に関する知見も極めて豊富という理解でいいと思います。
プレス向けのプレゼンでは、ピッチ系、PAN系の組み合わせで作ったSMC(シートモールディングコンパウンド)の物性紹介などもあり、やはり強度と剛性のバランスを取ることの重要性などを訴えたようです。
世界的なプリプレガーらしい発表ですね。
FRPが急拡大する中にあって、炭素繊維業界を中心に常に最前線を走り続ける日本。
これからの活躍も楽しみです。