TOYOTA MIRAI に搭載されるFRP製水素 タンク 概要
MIRAIに搭載されるFRP水素 タンク の概要が少しずつ見えてきましたのでご紹介します。
以前の記事でMIRAIについては一度ご紹介しました。
https://www.frp-consultant.com/2014/12/11/toyota-mirai-toray-cfrtp/
今日の記事ではFRP製水素タンクの基本構造から少し細かいところを述べてみたいと思います。
タンクの構造は、前回の記事でもご紹介したUBE(宇部興産)のポリアミドのライナーが最も内側です。
これは分子の大きさが極めて小さい水素を閉じ込めるためです。
そして、その外側がCFRP(炭素繊維強化プラスチック)。
最大700気圧に到達する高圧水素の圧力に耐える必要があるため、
かなり慎重に積層されているようです。
主な成形プロセスはフィラメントワインディング。
マンドレルを回転させながらFRPを巻き付けていく成形手法です。
円筒部分をほぼ垂直に巻いていく「フープ巻き」、
タンクの両端のドーム状の部分に巻いていく「低角度ヘリカル巻き」、
両者の境界部分を補強する「高角度ヘリカル巻き」といった積層を行い、
可能な限り壁の厚みを抑えながら強度を発現させるということを実現しています。
当然ながら厚みが薄くなればその分スペースが確保されるというメリットがあります。
そして最外層にはGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)が巻き付けられています。
このGFRPを採用した理由としては、表面保護が目的のようです。
このFRP製水素タンクは時速80キロメートルの衝突試験に対しても破損なく耐えたそうです。
そして、やはり気になるのが安全性。
まず第一の安全設計として、配管からの水素漏れや、衝突による衝撃などをセンサーが検知すると直ちにバルブを閉じる、というもの。
第二の安全設計としては、万が一火災などに巻き込まれてタンクが炎に包まれた場合は、
タンク内の水素の温度が上がって膨張し、タンクが破裂する恐れがあるため、溶接弁を設けており、
高温になるとこの弁が溶けて水素を放出する設計となっています。
水素を放出すること自体は極めて危険な状況ですが、溶接弁から放出された水素に火がつくものの、
ガスバーナーのように燃え、タンクの内部の水素に引火して爆発することは無いそうです。
700気圧に圧縮された水素で650kmもの走行が可能なMIRAI。
今後も何かわかりましたら、順次ご紹介していきたいと思います。