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炭素繊維 / ポリアミド CFRTPの熱融着を利用した 損傷修復

2015-02-24

本日のコラムでは、日本複合材料学会誌に掲載されていた、炭素繊維 / ポリアミド CFRTPの熱融着を利用した 損傷修復 の研究論文に関するご紹介をしたいとおもいます。

 

京都大学大学院の金崎真人氏のこの論文は

炭素繊維 / ポリアミド CFRTP(以下 CFRTP )に衝撃を与えることで内部損傷を発生させ、その後 thermal fusion bonding (以下、熱融着)によって修復することでどのくらい物性が回復するのか、

という事について概論が述べられています。

 


用いられている材料の構成としては、一般的なプリプレグに加え一層あたりが40μmという 薄層技術 を応用したものとの比較も書かれています。

 

耐衝撃性は 薄層技術 を応用した材料(以下、薄層材料)のほうが高いことが述べられていますが、高エネルギー衝撃において、熱融着による強度回復という観点でみると若干薄層材料の方が低いように見えます。

 

これは、薄層材料では最外層の強化繊維が破断してしまっているために強度が回復しないのではないか、と述べられています。


それでも、

衝撃付与によって70%近くまで低下した強度が熱融着によって95%程度まで強度回復する

という事実は興味深いですね。

 

 


このような 損傷修復 という考え方、実は量産になってからも大切です。

 


構造物の最終破壊につながる内部損傷の評価が難しいFRPという材料特性上、可能な限り

 

「交換」

 

によってFRP材料の破壊につながる潜在的なリスクを除去することが基本的には望ましいと考えます。

 


FRPが金属材料と異なり疲労限を持たないというという性質もこの運用方法を支持しています。


マーケットでの使用実績があまりないFRPについては、コストよりも安全性を重視することが第一歩だと思います。


この様な安全性重視の実績の積み上げによって、FRP適用の適材適所化が進み、より幅広く使われるための土壌が醸成されると考えています。

 


ところが、航空機の機体や自動車の車体といった大きなものは小さな部品と異なり簡単に交換、
というわけにはいかないため「補修」という概念も必要になってきます。

 

補修の方法としては、今回ご紹介したような熱可塑性マトリックスの場合の熱融着はもちろん、
FRPを損傷部分に追加して接着剤で固定して補強するといった考え方もあります。

損傷したと思われる部分を除去して新しい材料を追加で積層するというやり方もあるようです。

 

 

補強をした場合、論文でも述べられているように

機械特性が完全に回復するわけではない

というのに加え、


別の素材で補強をする場合は形状が変化することで応力集中が起こる可能性もある

 

など、注意深く実績を積み上げながら補修工程の妥当性を検証していくことが肝要だと思います。


補修した後の物性評価としては、静的評価だけではなく、疲労強度、クリープ強度も見るなどして、
多角的な視野で評価していくべきだと考えます。

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