Airbus A350 center wing box の strut に対する Exelis 社のCFRP部品提供決定
A350-XWB シリーズで最も長い機体を有する、 A350-1000 の主翼の付け根に位置する center wing box の strut (支柱)の FRP 部品の提供について、Exelis 社が契約締結をしたとのことです。
Exelis 社というのは通信技術に端を発する会社ですが、ビジネスの一つとして FRP 部品の設計、製造を行っています。
http://www.exelisinc.com/capabilities/Composite-Aerostructures-and-Subassemblies/Pages/default.aspx
上のホームページを見てもらうと、民間機のB7シリーズやA3シリーズに多くの FRP 部品を提供していることがわかります。
そして、防衛関係の仕事も行っているようです。
従業員も1万人近くで、売り上げも5000億円を超えている大きな企業です。
Center wing box というのは主翼からの荷重を担うとても重要な部分で、
かつてB787も認定試験中にこの部品に関連する連結部の損傷により認定が大幅に遅れた、
と言われています。
A350-1000 は FRP による軽量化のみならず、最新の空力設計により、
従来の同クラス機体の航空機と比較し25%の燃費改善を達成したと述べています。
この軽量化の主な軸として取り組んでいるのが構造設計の最適化と FRP の適用拡大です。
A350-1000は非常に大きな機体ですので、
Center wing box も大型であるため、そこに用いられる Strut も大型であると予想されます。
大型故に素材を FRP に変更することによるメリットは大きいに違いありません。
今回のような航空機の内部構造の Strut のようなものに FRP を使用することについては非常に効果も高く、FRPとしての性能も発揮しやすいと考えます。
ただし、注意しなくてはいけないのは FRP というのは破断荷重の20?40%程度の低荷重で内部の部分破壊を起こす可能性があるという事実です。
以前、「はじめてのFRP – 非破壊検査2」という記事でもご紹介しましたが、
トランスバースクラックのようなFRPの初期内部破壊をアコースティックエミッション(AE)で調べると、
上述したような低荷重領域で破壊が徐々に進行する様子がわかります。
もちろん最終破断にすぐいたる、というわけではありませんが FRP というのは金属と異なり疲労限の無い材料。
小さな損傷が少しずつ蓄積して構造材としての機能不全に陥るような決定的な損傷につながる可能性はあるのです。
航空機ではエンジン回りなど、特にある程度の高周波振動が加わる可能性のある部分については設計するにあたって注意が必要です。
安全に十分配慮し、初期破壊を見逃さないようなセンシング技術を盛り込むことが重要であると考えます。