Rolls-Royce composite 技術動向
航空機エンジンメーカーの中では FRP を含む composite の適用で後れを取っていた Rolls-Royce が攻勢に出始めました。
イギリスの Bristol に composite ( FRP を含む複合材料)の研究開発拠点を設立すると発表しています。
Bristol大学の中に Rolls-Royce University Technology Center という組織を作って研究を行い、今回新たにつくる研究開発拠点では技術の量産化検討を行うという役割分担がなされるようです。
50年以上も前に FAN の FRP 化を推し進めていた Rolls-Royce ですが、
実用化に失敗した上、事業が破たんするという苦い歴史を持っています。
この苦境を打破し、 Rolls-Royce は2020年以降から現行の Trent シリーズから Advance シリーズ、そして UltraFAN シリーズと、順次上市する予定としています。
まず FRP 関連で搭載を予定しているのが FAN と FAN case のようです。
5年後の Adcance シリーズから搭載が開始されるといわれています。
CTiと発表された時は Tiをマトリックスとする MMC( Metal Matrix Composite )かと思っていましたが、あくまでリーディングエッジを保護するのにTiを使っているだけで、ベースの母材は熱硬化性エポキシをマトリックスとした CFRP のようです。
表層は印象的なエメラルドグリーン(のような鮮やかな色)ですが、一度講演できいた Rolls-Royce の担当者は、
「基本的に黒の母材に色を付けているだけで機能性は無い」
といっているものの詳細は不明です。
「今までとは違う新しい技術を搭載した」
というメッセージを表現する色だとのことでした。
FRPの FAN は大型エンジンを中心に適用が着実に広がってきています。
大型航空機エンジンメーカーでは GE や Pratt & Whitney が FRP 適用では先行しています。
航空機エンジンの燃費性能を高めるためには FAN を大型化するのがトレンドとなっているため、大型化すればするほどFRPを用いた場合の軽量化効果も大きくなります。
ただし大きくなればなるほど積層工程に時間がかかるため、
Rolls-Royce も自動積層の技術を取り入れていると書いています。
Rolls-Royce は非常に保守的な設計のエンジンによって絶対的な信頼性を誇ってきた企業です。
UltraFAN ではFAN module の実に70%近くをFRP化すると述べていますが、
この信頼性を基礎にFRPを Rolls-Royce がどのように適用拡大につなげていくのか注目です。