Toray の 長繊維ペレット 製品拡大
Torayが展開する熱可塑性樹脂をマトリックスとした 長繊維ペレット のラインナップを拡大するようです。
強化繊維は炭素繊維です。
現在、ホームページ上では TLP 1000 番台の ポリアミド ( PA ) 、
TLP 5000 番台のアクリロニトリルブタジエンスチレン ( ABS )が載っていますが、
ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート( PBT )といったものもあるようです。
http://www.torayca.com/download/pdf/longpellet.pdf
2015年3月号のプラスチック成型加工学会誌で掲載された、「熱可塑性樹脂複合材料」の特集において、上記のマトリックス樹脂に加え、 ポリプロピレン ( PP )、ポリフェニレンサルファイド ( PPS )をマトリックスとした製品についての紹介がありました。
Toray の展開する長繊維ペレットというのは、
従来の連続繊維をベースとしたRTMやオートクレーブを用いての成形の欠点である「長時間成形」を克服するため、熱可塑性樹脂での射出成形を目的に開発されたものです。
ところが、一般的な射出成型用繊維強化ペレットは溶融混練を経由する際にスクリューで切断されるため、繊維長が0.2?0.3mm程度まで短くなることから強化繊維としての性能を発現することが困難です。
この繊維が短くなってしまうという欠点を補うべく開発されたのが長繊維ペレットです。
繊維と樹脂の両方を自前で開発、生産できる Toray の強みを生かした製品ではないでしょうか。
円柱ペレットの長手方向に繊維を引きそろえて含浸させる手法により、
ペレットサイズをフルに生かした繊維長を保つことが可能のようです。
射出成形の前のスクリューを通過するときにある程度繊維は切断されてしまうようですが、
射出成形後も繊維長は1mm長さをピークに0.2mmから2mm近くまで分布しているため、
マトリックス樹脂をポリアミドにした場合、強化繊維含有量が10wt%以上で200MPaを超える引張強度を示すと書かれています。
さらに界面接着性に関する知見の多い Toray は表面処理剤、マトリックス樹脂の改質によって、
PPやPPSのような樹脂に対しても大幅な界面接着強度向上を達成しているそうです。
繊維強化熱可塑性ペレットは、熱可塑性マトリックス樹脂を用いたFRPの適用拡大にとても大きな役割を果たすと期待されます。
ただし今回のように繊維長を1mm以上で強化した場合、物性は高まる一方、プロセス性は低下するのが一般的です。
繊維長が長ければ長いほど溶融した時の粘度が上がる(長い繊維が抵抗になる)と考えられ、
射出によって細かい形状に対して安定して充填することが難しくなってきます。
かといってあまり温度を上げすぎると樹脂が酸化分解する恐れもあり、
バランスが必要となってきます。
今回紹介した 長繊維ペレット もその特性を十分に検討したうえで、活用することが重要だと考えます。