耐熱老化ポリアミド ( PA ) GLAMIDE HR
東洋紡から、高い耐熱老化性を有するポリアミド( PA ) である GLAMIDE HR シリーズが発表となりました。
※東洋紡のエンジニアリングプラスチック製品リストのURLは以下の通りです。
http://www.toyobo.co.jp/seihin/xj/enpla/nylon/grade.htm
FRPの熱可塑性マトリックス樹脂の中で、比較的プロセス温度が低く、耐熱性も高いという事で、
自動車業界を中心に適用検討が進む PA 。
自動車に適用される場合、高温になるエンジン回りはもちろん、
真夏の太陽のもとでは外板にも耐熱老化性能が求められます。
その PA の耐熱老化性を高めた東洋紡の製品が GLAMIDE HR シリーズです。
従来技術として銅(Cu)の添加によってポリアミドの耐熱老化性が向上することは知られていますが、
(本技術については後日ご紹介します)
近年求められる180?200℃という温度領域における耐熱老化性能は Cu 添加だけでは不十分であったそうです。
東洋紡の発表している技術データによると、 HR-252 GF というガラス繊維強化のHRシリーズにおいて、
180℃で2000時間という熱劣化による引張強度変化が殆ど起こらず
200℃で2000時間の劣化後でも60%以上の引張強度を保持できる
とのことです。
銅添加だけでは、上記の熱劣化で引張強度が70?90%程度低下することを考えれば、
かなり高い強度保持率です。
今回紹介されていた GLAMIDE HR シリーズの耐熱劣化性能が何に由来して発揮されているのかは当然ながら機密のようですが、ポリアミド樹脂の適用範囲拡大させる際に有益な情報であることには間違いはないと思います。
ただしその一方でユーザー側としては注意しなくてはいけない点があります。
上記で評価されているのはあくまで、
「耐熱劣化性」
であり、
「耐熱性」
ではありません。
耐熱性の中の一部である、耐熱劣化に対してのみ評価されています。
180℃で2000時間劣化させても引張強度に変化が無い、
ということは、180℃で必ずしも使用できるという事と同等ではないという事です。
殆ど力学的な負荷のかからない状態であれば、
GLAMIDE HR シリーズの樹脂を180℃環境下で用いることも可能かもしれませんが、
何かの重量を支えているといったいわゆる「クリープ」の負荷がある場合、
ガラス転移温度(Tg)がせいぜい50℃であるポリアミドが耐えられるわけでもなく、
ゴム状態となったポリアミドは力学負荷に耐え切れずに変形してしまいます。
さらに、温度が低かったとしても湿度が非常に高い環境である、
紫外線やオゾンが強い環境であるなど、環境の条件によっても劣化の状態は変わってくるでしょう。
アプリケーションとして用いる場合に、どこまでさらされる環境や要求される寿命を想定できるか。
FRPの適用拡大のキーはこの一言に集約されると思います。