FRPの 落雷 対策を考慮した 自動積層
FRPを航空機はもちろん、自動車、可燃物保管タンク、風車といったものに用いる際、
「 落雷 対策」を施すことがとても重要です。
この 落雷 対策に対し、Fiber Placement や Tape Laying 技術で世界的に有名な Automated Dynamics が、 落雷 対策を行いながら得意のFRP自動積層を行うという技術を発表しました。
http://www.automateddynamics.com/2015/general-news/lightning-strike
導電性があると一般的に言われている炭素繊維でさえ電気抵抗率で一般的な金属で100?1000倍の抵抗があるため、
ひとたびFRPが落雷を受けると大きく損傷することが知られており、
金属メッシュをFRP層間に挟む、スパーク防止のためにファスナー部に金属箔を入れるなど、
様々な対策をする必要があることなどを昨年「こちらの記事」でご紹介しました。
FRPの 落雷 による破壊一例として、CFRP製ヨットが 落雷 によって損傷を受けた時のCFRP製マストの写真が以下のページの Fig.6 に掲載されています。
http://www.sponbergyachtdesign.com/fourmastfailures.htm
最外層が完全にはがれおち、強化繊維である炭素繊維の破断も見られます。
外観からもかなりの範囲が盛り上がっていることから、
内部剥離は実際に写真で見える損傷よりもかなりの広範囲に広がっていると想像されます。
Automated Dynamics が発表したのは、FRPの落雷対策として昔から行われている金属メッシュ(一般的には銅メッシュ)を、自動積層を行うFRPテープの中にあらかじめ入れ込むという技術を軸にしたものです。
熱可塑、熱硬化、どちらのマトリックス樹脂に対しても対応可能としており、適用範囲も広そうです。
既に Automated Dynamics 社は本技術を特許化したと発表しており、
今後はFRP業界に浸透させるべくビジネス範囲を拡大していくとのことです。
ところで、この Automated Dynamics 社の 落雷 対策FRPの技術的なポイントは何でしょうか。
最もキーになりかつ難しいのはFRPをテープにする「スリット加工」であると考えます。
自動積層においてはFRPテープのスリット幅が狭くなればなるほど複雑な形状に対する積層が可能となります。
ただし、精度よくスリットをするというのは非常に高度な技術です。
繊維の種類、織り方などによっても切りやすさ、切りにくさにも差が出る上、
毛羽などが立てば「からみ」が生じてすぐにスリット工程が止まってしまいます。
今回ご紹介したような「金属メッシュ」をあらかじめFRPに埋め込んだうえでスリットするとなると、
スリット工程がさらに難しくなることが予想されます。
FRPの安全性向上に必須な技術の一つである「落雷対策」。
今後も様々な検討が継続して行われると予想されます。