FRP製品製造量産化で重要なことは?三井物産- 金沢工業大学 の共同開発契約をよむ
日本の大企業と大学の連携という新たな動きが発表となりました。
三井物産と 金沢工業大学 が、金沢工業大学内にある 革新複合材料研究開発センター ( ICC )と、
炭素繊維複合材料( CFRP )による自動車部品製造棟の新製造法に関する実証実験を行うことで合意し、
CFRPに関する協力協定書及び機械貸借契約を締結したとのことです。
http://www.mitsui.com/jp/ja/release/2015/1204431_6044.html
炭素繊維やFRP材料の製造で世界をけん引している日本ですが、FRP製品の拡大では後れを取っている現状に危機感を募らせている経済産業省もサポートする形での大型契約締結のようです。
いよいよFRP業界についても産官学連携が進んでいくのでしょうか。
三井物産のプレスリリースによると三井物産が設備を購入し、
ICCやユーザー企業を含む関連企業コンソーシアム(※)に同設備を提供し、
共同でCFRPによる自動車部品を初めとした部品の製造技術の検討と実証を行うそうです。
※2つ以上の個人、企業、団体、政府(あるいはこれらの任意の組合せ)から成る団体であり、
共同で何らかの目的に沿った活動を行ったり、共通の目標に向かってリソースをプールする目的で結成される
(ウィキペディアより出典)
産官学が連携し、
– 研究は大学が
– 実証評価は公的研究機関が
– 最後の量産化は企業が
という欧米流のやり方を目指しているのかもしれません。
欧米の産官学連携はいろいろ問題があるものの一般的によく行われていることを考え、
日本も国を挙げてキャッチアップをしようと力を入れている様子が伝わってきます。
ここで少し観点を変えて、FRP量産現場での現実はどうかということを考えるために、FRP製品の製造について実際の現場の観点から少しだけ意見を述べてみたいと思います。
アメリカで航空機エンジン向けFRP部品の量産工場を立ち上げた実体験を通じて製造工程に関して重要と考えることは、ひとえに、
「いかに工程をシンプルにするか」
ということです。
早く、そして安く部品を作るというホームランを狙ってあまりにも多くの複雑な工程を組んでしまうと、
何かが起こった時、どこで問題が起こったのか究明が困難となります。
さらに、熱硬化性樹脂をマトリックスとしたFRP材料を用いる場合、どれだけ工程を管理したとしても経時で変化していく材料の変質までは管理できず(冷凍保管中でも変質していきます)、
「同じ人が同じ設備を使って同じように作っても、内部欠陥や材料ショート、外観異常が頻発する」
ということが多々起こりました。
当然ながら、オペレーターの違いやシフト時間によって不具合発生率が変化するなど、
工程をシンプルにしたとしてもそれ以外にFRP製品の出来不出来を支配するパラメータは潜在的なものも含めて非常に多いです。
そのため、設備などで管理する製造工程はできる限り簡略化することが望ましいのです。
簡略化すれば不具合の原因究明工程にかかる時間を短縮することが可能となります。
この「原因究明の時間短縮」こそが、安定してFRP製品を市場に提供できるという「安定供給能力」につながり、結果としてFRP製品の製造に関する「市場からの信頼」と「量産化に関する知見」を蓄積できるのです。
いずれにしても ICC を主軸とした産官学連携が日本で機能し、
日本製FRP製品が多く誕生するという事を楽しみにしたいと思います。