Solvay 社製 PEEK シーリング材が耐油性と耐酸化性認定を取得
熱可塑性FRP( FRTP )の高耐熱マトリックス樹脂の代表格である PEEK ( Polyetheretherketone )のアプリケーション検討の一助となるニュースが発表されました。
PEEK のサプライヤーであるベルギーに本部のある Solvay Specialty Polymer の製品 KetaSpire® KT-820 NT が、ノルウェーの耐油と耐酸化性評価規格である NORSOK M-710 の認定を取得することに成功したとのことです。
http://www.solvay.com/en/media/press_releases/150504-NORSOK-M710-Cert-Granted-ATO-Ketaspire.html
M-710 というのは主に海中での永久利用を想定した、石油やガスの輸送ラインに使用できる、
非金属のシーリング材や補助材に関する規格で、その業界では有名なもののようです。
イタリアに拠点のある ATO が KetaSpire® KT-820 NT を用いてチューブ材を作りこの認定取得をしたとのこと。
上記の Solvay 社のプレスリリースの中に M-710 の規格試験の内容が一部書かれていますが、
かなり厳しい印象です。
硫化水素10%、二酸化炭素5%を含むメタンにさらされた環境で10気圧の圧力をかけられ、
200℃、210℃、220℃という高温で49日間さらされた後の膨潤量や引張強度の変化を計測します。
その結果、KetaSpire® KT-820 NT は暴露試験前後でほとんど変化が見られなかったという結果でした。
耐薬品性の高い結晶性高分子の性能をいかんなく発揮している印象です。
今回の記事は PEEK 単体に関するものですが、FRPを検討するにあたり一つの知見を与えてくれていると考えます。
それは、
FRPのマトリックス樹脂としても用いられているPEEKが単体で示したこの特性をFRPとして応用できないか
ということです。
熱可塑性FRPである FRTP に関し、どうしてもタクトタイムが短いという点ばかりが注目されがちですが、
Solvay は耐油性、耐酸化性という「機能性」を主軸に発表を行っています。
結晶性高分子は耐薬品性が高いということは知られていることですが、
FRPとして考えるときにこの熱可塑性樹脂の特性はあまり重要視されず、
賦形したときの形状を保持する補助材としての役割のみを求められることが多いというのが印象です。
FRPに用いられる強化繊維は炭素繊維を中心に極めて高い物理機械特性を示すため、
FRPとしての性能は強化繊維よりも物理機械特性の劣るマトリックス樹脂によって支配されてしまいます。
そのためFRPを製品化して利益を上げる付加価値を検討するためには、
マトリックス樹脂の特性から理解するという基礎概念が重要となります。
そしてこの「付加価値」につながる一つの特性こそが「機能性」と考えることができます。
PEEK の機能性の一部である、耐油性や耐酸化性をFRTPとして活用できないか。
そのような思考こそが「付加価値への検討」へとつながっていきます。
FRTP の設計をする際の参考になれば幸いです。