Stratasys Additive Manufacturing が A350 XWB の3Dプリント部品提供元に選択
ものづくりのトレンドを走る 3D プリンティング。
世界一保守的と言っても過言ではない航空機業界で 3D プリントの部品適用が拡大し始めています。
プロ向けの 3Dプリンタ を販売する Stratasys ですが、
Airbus の最新機体 A350XWB に対する 3D プリンタ で製造する部品提供元として選択されたとのことです。
http://blog.stratasys.com/2015/05/06/airbus-3d-printing/#
部品製造の計画遅れのリスク低減を目的に Airbus が 3D プリント部品の適用開発を開始したのが2013年。
そこからわずか2年弱で採用までこぎつけたようです。
もちろん今回開発したのは構造材でも2次構造材を初め、
アクセサリーに近いような部品であったと考えられますが、
それを考慮したとしても航空機業界としては開発期間が非常に短いという印象です。
今回用いられているのは FDM 3D Production System という 3D プリンタ。
http://www.stratasys.com/3d-printers/technologies/fdm-technology
使われているのは、ULTEM(TM) 9085 という Polyetherimide (PEI)です。
上記のスペックを見るとわかりますが、航空機の認定を得た材料だけあって、
かなりの材料物性項目が記載されています。
そして少し驚いたのが今回の試験規格にある「FAR」。
これはアメリカ連邦航空局であるFAAが要求する規格のことを言っています。
https://www.faa.gov/regulations_policies/faa_regulations/
航空業界での、耐火性、有害物質制約といった厳しい安全基準を突破した、
ということを前面に押し出し、製品のブランドを高めようとする意志が感じられます。
ULTEM(TM) 9085 は着色はもちろん、ガラス繊維での強化 FRP も可能とのことで、
3D プリンタとしてFRPを成形しているのかまでは現段階では不明ですが、
非常に興味深いです。
技術的には既に 3D プリンタ でのFRP成形は始まっているので、
もしかすると今回もGFRPとしての適用を進めるのかもしれません。
(以下は一例です)
http://www.stratasys.com/resources/case-studies/automotive/urbee
今回の 3D プリント部品を航空機部品に用いるということの目的は、
– 市場要求に対する柔軟な適用
– 加工ロスによる廃棄素材の減少を初めとしたコスト削減
– サプライヤー選択肢拡大
– 従来では困難だった複雑形状物の製造
であるとのことです。
この中でサプライヤーの選択肢拡大ということはとても重要であると考えます。
これはFRPに関しても同じことですが、
どこでも同じように作れる、ということは製品安定提供のセーフティーネットになるからです。
どうしても特殊な金型やオペレータースキル、
そして加圧設備などが必要なFRP。
3Dプリンタというのはコスト削減というよりも、
FRPの製品「安定供給」という観点から今後一つの主役として成長していくのかもしれません。
どれだけすぐれたものであっても、部品提供そのものに不安が出るような製品では市場の信頼を獲得できません。
このようなコスト以外の観点を熟考することで、今トレンドである 3D プリンタ の活用方法が見えてくるのかもしれません。