HP-RTM を用いたCFRP高速成形設備
イギリス Bristol にある National Composite Center ( NCC )が HP-RTM ( High Pressure Resin Transfer Molding ) 5分以内でのCFRP構造部材成形を可能とする技術を発表しました。
schuler グループがプレス機の開発などを手掛けたようです。
※schulerのHP
https://www.schulergroup.com/unternehmen/presse/pressemeldungen/index.html?sLang=en
現在でもFRPの主力を占める熱硬化性FRP。この熱硬化性FRPの最大の弱点の一つと言われているのが「成形時間の長さ」です。
その成形時間の大幅短縮を HP-RTM と、
下型を主な可動軸にするという設備の組み合わせによって、達成したというのが今回ご紹介する記事です。
減圧した金型の中に基材である強化繊維の炭素繊維を入れ、0.2?0.3mmくらいの隙間を作っておきそこにマトリックス樹脂を60?150barという高圧で注入します。
このわずかな隙間によってマトリックス樹脂を硬化開始前に全体にいきわたらせることが可能とのことです。
上記のプレスリリース上では樹脂が炭素繊維全体に行き渡るまで硬化は終わらないと書かれています。
(詳細な根拠は述べられていません)
金型のキャビティ面と強化繊維のクリアランスを一定に保つため、
そして成形品の精度を上げるために型の平行制御にはかなり気を遣っているようです。
横型はあくまで型位置を仮決めするためのものとして活用し、所定位置に到達した時点で固定し、脱型は下型を動かすことで行うとのこと。
この下型には複数の低ストロークのシリンダーが取り付けられており、細かい平行の制御と樹脂のフローパスであるクリアランスの保持を行うそうです。
従来の一般的なプレス設計である上型を上下させるというものではなく、
下型を上下させることにより上述した平行制御を行う際の軸数を減らし、
さらに1000mm/secという高速の型締めが可能になると書かれています。
今回の下型を動かして加圧するというプレス設計、横型をロックするという思想など、
特に真新しい技術であるという印象はありません。
しかし、BMW のRTMベースでの量産化実現というニュースもあり、
RTMによる高速成形は今FRP業界で非常に盛り上がっている領域となっています。
一部公開されている BMW のCFRP部品の量産化の内情を見ると、
一つ一つの細かい部品に関する設計値、非破壊検査要件、外観要件など、
非常に細かく規定されていることがわかっています。
この辺りは、以前参加した以下のセミナーでもBMWの担当者が述べていました。
http://www.carbonfiber.gr.jp/tech/pdf/28th_seminar_pamphlet.pdf
そして何より BMW の強みは材料メーカーである SGL と全面協力体制をとっていること。
設計、材料、製造、解析、検査といった多くの領域をまたぎ、
かつ材料というFRP製品の原点から掌握しているということが、
FRP製車体の量産化につながったといっても過言ではありません。
schuler のHP-RTMの成形技術を生かすも殺すも、
CFRPやマトリックス樹脂という材料、
そしてCFRPの特性を理解した設計思想次第ではないかと思います。