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はじめてのFRP 異方性 に由来する面内と面外強度評価

2015-06-05

FRP設計時に避けられないのが「 異方性 」。

一般的な材料構成である一方向材のUD(Unidirectional)FRPの強度では、
強化繊維方向の強度は90°ずれた方向の強度と比較して50倍もの強度差があります。

 

これがFRPの強度の 異方性 の一例です。

 

このような異方性を考慮するときに使用する言葉として、

面内

面外

というものがあります。

 

FRPを設計する方や材料評価をする方にとっては常識なのですが、
FRP成形を主に行われている方々にとってはなじみが薄い言葉かもしれません。

 

面内というのは、一言でいうと、

「紙の上」

といったところでしょうか。

 

面内引張強度というのは、四角形の紙の上端と下端を挟んで引張るときに耐えうる力。

面内圧縮強度というのは、四角形の紙の上端と下端を挟んで両者を近づけようとして押し込むときに耐えうる力。

面内せん断強度というのは、四角形の紙の左上と右下を対角線方向に引張るときに耐えうる力、または2枚重ねた四角形の紙を浮かせないようにしてずらすときに必要な力。

 

ちなみに圧縮強度について、圧縮していった時に紙が折れ曲がって浮き上がってしまう場合は「座屈」となり、
曲げなどの別の変形モードになってしまうので正確には圧縮強度ではなくなってしまいます。

 

このようにすべての変形が平面で完結しているのが特徴です。

 

 

その一方で面外というのは、

「平面では完結できない力のやり取り」

です。

 

一般的な積層構成をもつFRPでは面外のことを「 層間 」ということもあります。

層間引張強度というのは、重ねてある2枚の紙を垂直方向に引張り上げた時、2枚の紙を引きはがすのに必要な力。

層間せん断強度というのは、重ねてある2枚の紙を”ずらしながら”上下方向に引きはがす時、2枚の紙を引きはがすのに必要な力。

 

先述した面内と異なり、層間では垂直方向の変形が起こっているということがわかります。

 

 

そしてこの層間、面内という考えは応力解析を行う時にも重要となってきます。

 

一般的な金属などの均質材とは異なるため、FRPでは面内、層間を考慮して応力を抽出し、
その応力値と材料データを比較することで、破壊するしないの判断をしなくてはいけません。

 

FRPでは面内強度と層間強度は上述したように強度に数十倍の違いがあるため、
この辺りは慎重に評価する必要があります。

 

 

今回の記事の最後として、材料形態と面内、面外の話をしてみたいと思います。

上記は一般的なUDなどのFRPの話をしていますが、
例えばランダム配向のSMC、短繊維のインジェクションといった形態のFRP材料もあります。

 

一つの考え方として、ランダムに繊維が配向しているものは等方性材料とする、と仮定するというのがあります。

 

ただし経験的にはランダム配向材であってもやはり面内、面外(層間)強度には差異が認められ、
異方性材料として扱うべきだというのが現段階での私の考えです。

 

JIS や ASTM などの試験規格に面内、面外の各物性をとる試験規格がありますが、
FRP適用で先行する欧米が主導するASTMの方が試験規格の選択肢としては多いという印象です。

 

ASTM で規格番号を知りたい場合は、 http://www.astm.org/ を見ていただき、
JIS については http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html を見ていただくのが良いかもしれません。

 

 

いかがでしたでしょうか。

面内と面外のイメージが少しでもつかんでいただけたでしょうか。

 

FRPの設計や材料試験を行う場合、面内と面外を考慮することが重要であるということをご理解いただければ幸いです。

 

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