GKN Aerospace が HondaJet の世界ツアーを祝福
三菱重工の MRJ より一足早く、同じく日本企業の 本田技研工業 が進めてきたプライベートジェットの HondaJet 。
販売を目前として世界ツアーに向かうとのことです。
この世界ツアーを航空機業界でのFRP生産、修復、設計等で大手の GKN Aerospace がプレスリリースを掲載しています。
http://www.gkn.com/aerospace/media/news/Pages/GKN-Aerospace-celebrates-the-HondaJet-world-tour.aspx
つい先日も成田空港に飛来してマスコミも注目している HondaJet 。
HondaJet に関連する情報は本田技研工業のHPにも掲載されています。
この HondaJet の機体はすべて FRP 製です。
本機体の設計をしたのが Honda Aircraft Company 、そして機体の製造を担っているのが GKN Aerospace です。
尚、 GKN Aerospace は FRP の機体だけではなく、アクリル製の窓の製造もになっているとのことです。
Out of Autoclave が勢いを増す FRP 業界ですが、HondaJet 機体は Autoclave で製造されているとのこと。
ただし、可能な限り同時成形( co-cure )を取り入れることにより部品点数を削減し、
軽量化はもちろん、機体内部のスペース確保を実現しているそうです。
GKN Aerospace と Honda Aircraft Company は2009年から機体の共同開発を開始し、
2011年に FRP機体 の量産契約を締結しており、足かけ6年がかりでの本格始動となっています。
さて、航空機の機体にFRPを使うことですが未だに賛否両論あるというのが現状かもしれません。
すぐに想像できるのが安全性ではないでしょうか。
機体内外の圧力差によって強烈な力が生じる機体に短繊維やランダム配向の材料を使うわけにはいきませんので、メインはUD材料だと考えます。
UD材は非常に異方性の強い素材であるため強度や剛性だけではなく、線膨張のような物理特性にも異方性が存在します。
航空機は暖かな地上から-50℃を下回る極寒の上空という極端に異なる環境を何度も行き来するため、
眼には見えないひずみをかけられ続けることとなります。
また大きな機体になればなるほど製造した時の変形が大きくなり、
その変形部分をスペーサーで抑え込むという構造材としてはできれば避けたい苦肉の策をとることも珍しくありません。
加えてFRPはどこかで金属と接合しなくてはいけませんが、
きちんと絶縁させないと電蝕が進行して金属側の物性が低下するということもあります。
(当然ながら、エポキシプライマーなどを塗布することによって対策は施されます)
Boeing が B777X でのFRPの使用量を B787 よりも減らしたというのも、
設計や製造の難しさゆえなのかもしれません。
とはいえ異方性というFRPの弱点は強みにすることも可能です。
強度や剛性が必要な方向へ積極的に繊維を配向させる、運用上かかる力を上手く繊維方向に伝達させる形状設計も一案です。
つまり、異方性を上手く活用するという設計思想こそ大切であると考えます。
信頼性が無いから、高いから、作りにくいから使わない、
ではなく、適材適所でFRPの特性を理解した上でFRPの適用範囲を熟考するというのが航空機業界に関わらずFRP業界にて求められる姿勢ではないでしょうか。
今後の展開が楽しみです。