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Chemical Stitching Process によるFRPのプリフォーム

2015-06-15

矢継ぎ早にFRPの成形工程に関連する技術を発表する Fraunhofer ICT からまた新たな技術が発表されました。

 

FRPの成形工程で最も人手と時間を有する積層工程。


特に強化繊維にバインダーとなるマトリックス樹脂が含浸されていないRTMのような工程では、
基材である強化繊維を積層する「プリフォーム」の精度が、
工程時間の短縮に加え、成形物の内部や外観の欠陥回避や、設計通りの物性を発現させるのに重要です。


基材のプリフォームにはスティッチングとよばれる厚さ方向への繊維導入による仮固定を行うのが一般的ですが、綺麗に並んだ基材に針によって糸を差し込むことは、スティッチング位置における基材位置の ”ずれ” や、積層繊維の方向 ”ずれ” といった問題につながる可能性があります。

 

今回 Fraunhofer ICT によって発表された技術は、
このスティッチングをメカニカルにではなく化学的な力によって仮固定しようというのが Chemical Stitching Process のコンセプトです。


http://www.ict.fraunhofer.de/content/dam/ict/en/documents/factsheets/Chemical_stiching.pdf

 

具体的には基材の仮固定をするための「 バインダー 」である液体の接着剤を先端に穴の開いた針を通して基材に流し込み、紫外線(UV)、赤外線、電子線、レーザーといった「 非加熱硬化 」や「 局所加熱硬化 」の手法によって基材を仮固定します。

 

機械的に糸を縫い付けるわけではないので基材に不必要な力をかけることもなく、強化繊維の"つっぱり"や"配向のずれ"は生じません。

 

RTMの場合、当然ながら後から注入するマトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こさない、
といったバインダーゆえの要求事項もありますが基材の初期位置や積層構成をできるだけ保持しながら、
次工程へとつなげるという意味では有力な手法であると考えます。

 

 

ここでのポイントは注入する バインダー (接着剤)の硬化手法として何を選ぶのか、
という所ではないでしょうか。


上記で述べたように、可能性のあるバインダー硬化を進める方法として、
紫外線(UV)、赤外線、電子線、レーザーなどが挙げられています。

どちらも局所的な硬化を可能にする手法として選ばれていると考えます。

 

UVやレーザーをバインダーの硬化手法として選択する場合、
ある程度基材を通過できるという制限が付きます。


つまり基本的に透明?淡白色のガラス繊維であればある程度透過することはできますが、
炭素繊維のように基材が黒色になってしまうと、この基材の存在自体がUVやレーザーを遮蔽するためにバインダーの硬化を阻害するということにつながります。


また、基材の透過性が問題でなくても、例えばUV硬化の場合、
積層する現場での紫外線遮蔽をきちんと行わなければ想定外の硬化挙動を示す恐れもあります。

照明の種類や外光によっては、このあたりに対しても十分に注意をしなくてはいけません。

 

ある程度透過性があると期待される電子線であっても、
電子線照射によって強化繊維そのものの劣化が進行しないのか、
作業場の被爆状況に問題は無いのかといった別の問題も生じます。

 

この様に非加熱硬化のバインダーを用いる場合には、気を付けるべき観点を事前に精査することが合わせて重要になってきます。

 

バインダーによる基材のプリフォームをご検討の方々の参考になれば幸いです。

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