はじめてのFRP – フライホイール へのFRP適用
本日の「はじめてのFRP」ではFRPの適用先として着実に研究が進んできている フライホイール について、
その概要と最新動向について述べたいと思います。
フライホイール というのは昔から「はずみ車」として知られているエネルギー貯蔵装置です。
回転するはずみ車のエネルギーをモーター/発電機を用いて電気の形で出し入れすることにより、
エネルギーの貯蔵と提供を行うことができます。
このフライホイールにはFRPを用いることが理にかなっていると昔から言われていますが、
それはFRPの比強度の高さにあります。
比強度とは単位重量当たりの強度のことを言い、軽くて強いほど高くなります。
金属でも強度が非常に高いものはありますが密度も大きいため、
比強度という観点ではFRPの足元にも及びません。
なぜ比強度が高い方がフライホイールに向いているのでしょうか。
直径 L 、密度 ρ 、周速 v 、角速度 ω で回転するときに発生する応力 σ は次式で示されます。
σ = ρv2 = ρ(ωL)2
つまり、密度が高い方が遠心力が高くなる分フライホイール自体に高い応力がかかるということになります。
軽い方が遠心力が低減できるというわけです。
フライホイールの重量を Wとしたとき、円盤状フライホイールにおける蓄積エネルギー E は、
E = 1/2W(Lω)2
となります。
よって、
E = 1/2W(σ/ρ)
となり、密度が小さく、遠心力に対する許容応力が高い方が蓄積エネルギーを高めることができるということがわかります。
(※出典 複合材料活用辞典)
現在主流のFRPフライホイールは、金属のハブにFRPを巻き付けるという形態をとっていますが、
蓄積できるエネルギー量を高めるため、金属ハブの外周に厚めにFRPを巻き付けるというのが一般的です。
フィラメントワインディングがFRPフライホイールの作製方法として一般的ですが、
金属とFRPは接着しないというのが一般的のようです。
金属を十分に冷却して径を小さくし、その状態でFRPを巻き付けるといった手法が取られていますが、これは接着によりハブをリングに追従させることが難しいことが背景にあるとのことです。
また、マルチリングという構成にすることで半径方向に発生する応力を低減させるという手法も採用されています。
巻き付けるFRPリングを分割し、内側には比弾性率の低いFRPリングをはめ込むことで半径方向の引張応力を、外側の比弾性率の高いFRPで抑え込むことで半径方向の引張応力を抑え込むという思想です。
このようなFRPのフライホイールですが最新動向はどうでしょうか。
2015年4月に鉄道総合研究所は超伝導フライホイール蓄電システムの試験運転を報道陣に公開し、
従来のフライホイールの倍以上の大きさである直径2m、重さ4トンのものがお目見えとなりました。
以下の日経の記事には動画も載せられています。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20150416/414662/
このプロジェクトはNEDOの「安全、低コスト大規模蓄電システム技術開発」助成事業として、
クボテック株式会社、古河電気工業株式会社、株式会社ミラプロ、そして山梨県企業局で進めている巨大事業です。
以下のように、各組織がプレスリリースしています。
※ 古河電気工業株式会社
https://www.furukawa.co.jp/what/2015/kenkai_150415.htm
※ 鉄道総合研究所
http://www.rtri.or.jp/rd/division/rd79/rd7920/rd79200107.html
※ 山梨県企業局
http://www.pref.yamanashi.jp/kg-denki/documents/fwpanhuretto11.pdf
古河電気工業株式会社 の情報によりますと、回転軸を-223℃という極低温にすることで、
超伝導にて非接触でのフライホイール支持に成功し、最高6000rpmという回転数で回転させることで、
300kw、蓄電容量100kwhを得ることに成功したとのことです。
FRPの高い比強度、比弾性を活用したフライホイール。
このFRP活用の仕方をヒントとして、FRPの適用方法の更なる拡大方向を探る戦略が必要だと考えます。