レーザーによるFRP裁断 remocut ®FRP
FRP部品の製造工程で肝の一つとなる「裁断( Cutting )」。
レーザーによってFRP裁断の自動化と高速化を目指そうという技術「 remocut ®FRP 」が Fraunhofer IWS にあります。
樹脂を含浸する前の炭素繊維やガラス繊維といった強化繊維、
また樹脂を含浸してあるプリプレグを含め、
多くが服飾と同じ裁断技術を用いることが多いです。
ところがドライの繊維であってもやはり粘りのある通常服飾に用いられるナイロン繊維やポリエステル繊維などと異なり、無機繊維であるガラス繊維や炭素繊維の裁断には工夫が必要です。
そしてさらなる問題が樹脂を含浸してあるプリプレグの裁断です。
一般的な薄手のプリプレグであれば刃物の消耗に気を付けながら使えば裁断することができますが、
近年注目度が増している厚手のプリプレグや長繊維のSMCなどは裁断が困難となるケースがあります。
一例としては、プリプレグに含浸している樹脂が刃物にこびりつき、
繊維が動いてしまうといったことや、樹脂や繊維のごみが刃物にこびりつき、
裁断自体が困難になるといったケースが挙げられます。
このような中で、Fraunhofer IWS は remocut ®FRP という名のCFRPレーザー加工を提案しています。
以下のページでは一部動画も含めて本技術の紹介がなされています。
http://www.iws.fraunhofer.de/content/dam/iws/de/documents/projekte/abtragen_trennen/remocut_FRP.pdf
これをみると、レーザーを反射鏡で受け、その反射鏡自体が動くことでレーザーの照射位置を移動させることで、特定形状の加工を可能にしているという事がわかります。
当然ながら特徴は2点。
1.レーザー加工ゆえの高速裁断
2.非接触のため加工部分がごみなどで詰まることが無い
この点については圧倒的な強みがあります。
上記のpdf資料の4ページ目にあるダンベル試験片の切り抜き加工のスピードは他の加工方法を圧倒しているのではないでしょうか。
ただし、気をつけなくてはいけない点もあります。
レーザーですので加工部分は非常に高温となります。
場合によってはこの熱によりマトリックス樹脂が炭化するといったことが起こるかもしれません。
私も実際、アラミド繊維強化プラスチックのレーザー加工を試みましたが、端面は黒く変色した経験があります。
端部は成形後にトリミングによって除去するという前提であれば上記の加工導入も可能かもしれませんが、端部が変質するという前提を忘れてはいけないと思います。
また、レーザーですので基本的には照射方向に対して直線での加工のみが可能である、
という事も忘れてはいけません。
remocut ®FRP をFRP成形体の加工に用いる場合、複雑な3D形状での加工は困難です。
二次加工でそのような加工を可能にできるのはやはりマシニングがメインです。
その一方で直線でのトリミングには高い効果を発揮すると考えられるため、
工程構築における一候補として持っておくのはやぶさかではないと考えます。
材料の裁断や加工を検討する際の参考になれば幸いです。