FRP戦略コラム – FRP業界への 参入 においての盲点
今様々な技術の中で、製造業を中心に活性化しているFRP業界。
ガラス繊維強化のGFRPは50年近く前から身近な製品に使われてきましたが、元々は航空宇宙向けの特殊素材としての扱いだった炭素繊維強化のCFRPも身のまわりで目にすることも増えてきました。
そして低価格化の流れに苦しむ日本の製造業において高価格帯のCFRPは救世主の一つとしてここ最近注目されており、 新規参入 、または 新規参入 を検討する企業が増えてきている印象です。
ところが、それらの多くが試作レベルを超えられず、
事業性が乏しいという逆風の中で苦しんでいるケースがほとんどです。
このような状況に陥ってしまう原因は何でしょうか。
最も大きな原因の一つ。
それは、FRP業界にて利益率を確保するには、
「マトリックス樹脂や強化繊維といった、特に川上を理解しなくてはいけない」
という事実がきちんと浸透していないことだと思います。
日本は製造業をベースに先進国へと変貌した世界的に稀な国です。
新興国に押されているとはいえ、自動車、電機といった個人向け製品で世界を圧巻しています。
これまでの上記産業で使われていた素材の多くは大量生産が可能な金属や汎用プラスチック。
これらの素材は均質、かつ低コストであるため非常に扱いの良い材料といえます。
その一方で、均質かつ低コストの素材というのは素材メーカーの参入も多く材料メーカーとしての選択肢が多い上、均質であるため設計がやりやすいという事実があります。
この事実のため、最終製品に近いメーカーは多くの選択肢の中から品質とコストのバランスの良い材料を選定し、それを成形メーカーに作ってもらい、それを組み立てるという、
「役割分担産業」
が成立していました。
ところがFRPはどうでしょう。
日本は世界有数のFRP素材生産量を誇っていますが、中小企業が参入する例はほとんどなく、FRP素材提供については数社の大手メーカーによって成り立っています。
これはFRP製造には高い技術やノウハウが必要で、材料品質を確保するためのパラメータが多いことが一因と推測されます。
この時点で素材選定の選択肢が狭いのです。
加えてFRPは材料そのものに異方性やマトリックス樹脂に由来する化学特性が表面化されるため、素材をきちんと選定するだけでなく、選んだ材料を用いて形状設計までやれることが求められる材料といえます。
つまりFRP業界では「役割分担産業」は成立しにくく、川上からできるだけ川下に下れるという広い視野が必要なのです。
うちは成形をやってきたので成形しかやりません。
うちは加工をやってきたので加工しかやりません。
うちは化学メーカーですので樹脂しかやりません。
うちはアッセンブリーメーカーですので、形状設計と強度、機能評価しかやりません。
という○○しかやりません、という姿勢ではなかなか事業化にたどり着くことはできないでしょう。
FRPに参入し、利益を上げられる事業化を推進するには間違いなく川上にあるFRPの素材の理解が必須なのです。
材料メーカーにお任せで、形だけ作るという従来の考え方は通用しません。
同じように、材料メーカーに委託で材料を開発してもらうというスタンスも機能しないでしょう。
FRP材料開発をやれるメーカーは限られているうえ、そもそも「材料開発を依頼する側」がFRP材料について深い知見を持っていなければ材料メーカーを適切な方向に誘導できません。
逆にいうと、自力で川上に上がっていこうという気持ちを持てる企業には後参入でも勝算は十分にあると考えます。
FRP業界への参入、並びに事業拡大を狙っている企業は是非、自力で川上に登ることをご検討ください。
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