FRP戦略コラム – FRP 市場参入前のデータ蓄積
FRPの中でも特に高性能を誇る炭素繊維強化の CFRP ( Carbon fiber reinforced plastics )。
ただし、この材料をものにするにあたり大手材料メーカーから材料を買ってきて、
自社で成形して形を作る、という従来の試作アプローチではなかなかものにできません。
FRP業界への 市場参入 のポイントは、自社の技術の強みを最大限に活かしながら、
できる限り材料という川上に遡上するという戦略が有効です。
今日のFRP戦略コラムではこの川上への遡上をするにあたり、
ポイントとなる、
「FRP市場参入前のデータ蓄積」
というものについて述べてみたいと思います。
実際のアプリケーションは別にして、自社でFRP材料を扱おうと考える場合、その材料が従来のものと違うのか、または優れているのか、といった相対比較を「市場展開前」にいかにして行うか、ということが重要です。
自社でのFRP材料を開発するにあたり、
その材料の物性を検証するのに適しているのは、
以下の3領域です。
– 宇宙
– 航空
– 深海
なぜでしょうか。
上記の3領域では、一般的な素材や材料では応えることが難しい、
「過酷な環境に対する耐性」
「非常に高い信頼性」
「高精度」
といった高い要求レベルがあるためです。
そしてこの高い要求レベルは製品のブランドではなく、
必要不可欠のものとして求められます。
このような環境下でデータを蓄積することが重要です。
これまで中小企業を中心に、このような業界で自社の材料のデータ蓄積を行うことは、
予算や人手の制限の関係で困難でした。
そんな中、国立研究開発法人として再出発した JAXA がイノベーションハブという制度をJSTの予算で事業を開始しました。
http://fanfun.jaxa.jp/event/detail/4905.html
この事業の趣旨としては、JAXA内に科学技術イノベーション総合戦略の主軸として大学や民間企業から技術を公募、さらに同じ組織内に異なる業種の組織に属する研究者、技術者を集めて交流を促し、航空宇宙技術における日本の国際協力を高めることを目的とした「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」という組織を設立するというものです。
ここでのポイントは、
民間企業から技術を公募する
という点です。
つまり、JAXAが募集しているわけです。
JAXAが取り組みたい課題の例なども以下の所に公開されています。
http://fanfun.jaxa.jp/event/files/event_20150709.pdf
先日、この宇宙探査オープンイノベーションフォーラムの説明会に出席しましたが、非常に多くの人で会場が埋まっており、関心の高さを感じました。
このような事業として予算を獲得できているところに自社の材料を持ち込んで、検証内容を提案、もしくは募ることで自社の素材や材料がどのレベルにあるのか、ということを把握できるという貴重な機会となりえます。
このような蓄積データが自社製品の付加価値や、顧客への訴求効果の向上へとつながり、結果として自社の素材や材料での市場ブランド力アップによる利益率向上へとつながっていきます。
すべてのデータ蓄積を自社内でやろうとすると、費用も時間もかかるだけでなく、そもそも実際のアプリケーションとして何が要求されるのか、ということをわからずに暗中模索するという事態に陥ります。
今回のJAXAのこのような動きは私のクライアント企業にとっても有意義であると考え、クライアント企業の方々には調査報告書を既に提出し、今後の戦略展開を検討中です。
川上に遡上する際、自社技術検証のフィールドの一例としてJAXAの技術公募をご紹介しました。
このような情報をアンテナを高くしてキャッチし、
一緒にやることのネガも検証の上、
自社の素材や材料の検証フィールドとして活用するということが重要です。