FRP製 竜巻シェルター の開発
竜巻王国のアメリカ合衆国から、FRP製 竜巻シェルター のニュースが入ってきました。
http://phys.org/news/2015-07-tornado-panels-montgomery-home.html
University of Alabama at Birmingham ( UAB )の Uday Vaidya, Ph.D. は2011年4月に200人もの死者と2000人近くのけが人を出した竜巻に衝撃を受け、竜巻による死者やけが人を一人でも減らせないか、という気持ちで研究をスタートさせたとのこと。
竜巻による死者やけが人のほとんどは竜巻そのものではなく、
竜巻によって巻き上げられた瓦礫が当たることが原因です。
このような竜巻で上空に巻き上げられ、強い風によって加速された瓦礫から人を守るためのFRP製 竜巻シェルター を National Storm Shelter Association の承認を経て、既に一部試作にて一般家庭への取付を開始した、と書かれています。
使われている素材はガラス繊維と樹脂の組み合わせである GFRP。
(素材の詳細については述べられていません)
NSSA/Texas Tech Debris Impact Test Facility にて各種高速打ち込み試験などを通して、
上記の材料が 竜巻シェルター としての機能を持つことを証明したとのことです。
初めにご紹介したURLの中に動画には、木材による高速打ち込み試験の様子がうつっています。
加えてGFRP製であるため軽量で工事も楽な上、着色や加工も容易であり、今の建物の壁材を変更するという簡易的なリフォームにてシェルターにすることが可能、というのもメリットの一つのようです。
今回のこのニュースから見えることは、
「FRPの特性を最大限に生かしつつ、既存技術との差別化を図っている」
という点です。
耐衝撃性が強いということに加え、
– 取り付け工事が楽である
– 加工や着色が容易である
という同等の耐衝撃性を持つ材料との差別化を考慮しています。
ここでコストだけを重視してしまうのが一般的な着眼点ですが、コストよりも前に、
「何によって差別化ができるのか」
ということを考えることが事業化には重要です。
それを高いか安いかを決めるのはお客様であり、開発陣はそれに気を遣うより、
「何故、この材料でなければならないのか」
「この技術が従来のものより優れたものは何なのか」
というコンセプトに頭を使うべきです。
そもそも今回の研究開発の根底には、
「人の命を救いたい」
という心に訴えかける部分があるというのもいいと思います。
FRPを製品化するにあたり、考慮の一助となれば幸いです。