FRP戦略コラム – FRP業界参入 時の重要点
本日のFRP戦略コラムでは、FRP業界への新規参入をお考えの企業の方向けのコラムを書きたいと思います。
FRPはものづくり産業の新たなフェーズを作り出せるという期待感から、
非常に多くの人やお金の投資が行われているというのがここ数年の印象です。
20年ほど前にも似たような状況があり、その後、航空機へのFRP実用化が大きく進みました。
そして今は航空機からさらに身近な自動車や建築物などへのFRP展開が試みられており、多くの企業が情報収集や試作を行っています。
この流れを受けてか、弊方にもFRP業界で実績を積み重ねてきた企業に加えて、
「FRP業界への新規参入」
を検討する企業からの問い合わせが増えてきています。
本日のFRP戦略コラムでは、FRP業界への新規参入を検討する企業にお考えいただきたいポイントについて、2点ほどご紹介したいと思います。
今回ご紹介するポイントは以下の2点です。
1.自社の現段階の強みを事業の主軸に置く
2.FRP工程の中でできる限り広範囲の業務範囲を担えるようにする
それぞれ説明します。
1.自社の現段階の強みを事業の主軸に置く
問い合わせをいただいた企業にお会いした時、必ずお聞きするのが
「御社の現段階の強みは何ですか」
という点です。
理由は単純です。
FRP業界の主流の真似をしたところでそれは既にスタートラインで大分後ろに居る状態となり、キャッチアップするだけで精いっぱいだからです。
今表に出てきている情報は5年以上前から開発や研究がスタートし、その中で不要なものが淘汰されて形になりつつあるものです。
それを今から追いかけてもあまり意味がないというのはイメージしやすいことなのではないでしょうか(もちろん活用できるものは活用しますが、お金を払って持ってこられるもので競争力を発現するのは規模の大きい一部企業を除いて困難でしょう)。
このようなお話をすると多くの企業様は、
「自社技術はこの業界では当たり前のものしかない」
とおっしゃいます。
ところが、ある業界での常識はFRP業界では非常識ということはよくあります。
複数の強みとなる技術をお持ちの場合、それらを組み合わせればさらに競争力が増します。
FRP業界で大切なことはどれだけ付加価値をつけて利幅を増やせるのか、という所にあります。
従来のものづくりの常識である、
「その業界の既存技術を改善し、いかに大量ロットで安く作るのか」
という戦略だけでは参入することは困難です。
そのためにも、
「今まで蓄積してきた自社技術は何なのか」
そして
「何が強みなのか」
ということを整理いただくことがとても重要となります。
新規事業参入を考える企業様に対する実際のコンサルティングでも、この「現段階の強み」というものを軸に参入戦略を考えていきます。
よって、コンサルティング中ではこの自社技術の理解というものに数ヶ月の時間をかけてヒアリングを行います。
このヒアリングを通じて自社技術の強みを再認識される企業の方も多いです。
このように、出発点であるこの主軸をどれだけ高くそして太くできるのかというのがまず重要なポイントです。
2.FRP工程の中でできる限り広範囲の業務範囲を担えるようにする
FRPというのは設計、材料、製造、解析、検査といった広範囲にわたり、強いつながりをもつ特殊な材料です。
例えばFRPの成形に参入したいと考えるとします。
FRPの成形というと、
「タクトタイムを短く成形する」
という所だけに意識を集中してしまう傾向はないでしょうか。
実際は、FRPの成形に関係するところでよく考えなくてはいけないところは、
– 材料の裁断
– 材料の積層
– 脱型と型清掃
– トリミング
といった波及する周辺項目はもちろん、
– 金型の型割設計
– バックの素材選定
– 成形物の非破壊、寸法検査
といった別の技術に関する知見も必要です。
さらに言うとこれらはあくまでFRP成形に関する部分だけの話です。
実は成形における問題点を少なくするためには、その成形工程の前段階にあたる
「FRP材料の設計」
をできることが重要なのです。
これは、FRP材料のマトリックス樹脂、強化繊維とその強化形態が成形工程に大きな影響を与える、という事実によるものです。
例えば熱可塑性FRPでしたら加熱と冷却両方に加え予備加熱を加味した成形工程を考えなくてはいけませんし、熱硬化であれば材料の保管状態と成形プログラムパラメータの相関について把握する必要が出るかもしれません。
また予め繊維に樹脂が含浸されたプリプレグではなくマトリックス樹脂を後から注入するRTMの場合、ドライの基材(樹脂未含浸の繊維)の裁断やプリフォームについて気を遣わなくてはいけません。
短繊維のBMCやSMCであれば、インジェクションやトランスファー成形も候補に挙がってきます。
その一方でウェルドラインや注入口の数や位置といった別のことにも配慮する必要があるでしょう。
つまり、適用する材料によって成形工程そのものが大きく変化してしまうのです。
参入する主軸を決めて軸を太く、そして高くした後は、その軸に帆を張ることで範囲を広げることが重要で、できる限り参入する業界として川上(強化繊維、マトリックス樹脂、材料の構成など)へ広げることが肝要です。
本日のFRP戦略コラムでは、新たにFRP業界へ参入する場合の重要なポイントのうち2点、
1.自社の現段階の強みを事業の主軸に置く
2.FRP工程の中でできる限り広範囲の業務範囲を担えるようにする
についてご紹介しました。
FRP業界新規参入における参考になれば幸いです。