Steel Fiber Reinforced Concrete floor の拡大
今日の記事ではFRPよりも少し範囲を広げ、 Composite ( 複合材料 )の技術を一つご紹介します。
ご紹介するのは、表題にもあるように
Steel Fiber Reinforced Concrete floor
つまり、金属繊維強化コンクリートです。
ラトビアから生まれた PRIMEKSS という企業は主にコンクリートベースの建造物向けの材料を開発している企業です。
この PRIMEKSS が販売している PrimeComposite は金属繊維強化コンクリートの「床材」です。
工場や倉庫の床として用いられるものです。
以下に、 PrimeComposite の紹介ビデオがあります。
http://www.primekss.com/about-us/primekss-videos/en/
釘のような金属繊維、というよりも金属ワイヤのようなものをコンクリートに混ぜているのがわかります。
基本的には短繊維強化ですが、短繊維と言っても5cm以上の長さがあるように見えます。
特徴は従来のコンクリート床材と比較して半分程度の薄さでできるということ。
加えて、つなぎ目部が無い状態で 6000 m2 もの床を作ることができるというのが最大の売りのようです。
これを可能にしたのは金属繊維によって強化された複合材料によってもたらされる、「低線膨張」と極めて高い「圧縮強度」。
つなぎ目をなくすことにより床の平滑が保たれ、メンテナンスも必要なくなり、
その床の上を自動運転のロボットが行き来することも可能になると述べられています。
自動運転において段差は最大の敵のようです。
この辺りの話は以下のpdfファイルに概要が書かれています。
この PrimeComposite の高い技術に対して各社が注目しており、先月建築企業の GRESSER が PrimeComposite に関する、ライセンス契約を交わしたと発表しています。
http://www.gresserco.com/blog-news/
差別化できる技術があれば、それを求める他社からのライセンス契約要望が出てくる、という技術系の会社にとってのビジネスモデルの一例ですね。
今回はFRPを少し離れて金属繊維強化コンクリートをご紹介しました。
これをご紹介したのにはわけがあります。
上記の PRIMEKSS 資料でも述べられていますが、
「建築資材の中でコンクリートに関する技術はここ40?50年ほとんど変化していない」
という事実を認識していただきたかったということです。
これまで本HPの記事でも何度かご紹介してきましたが、
建築物というのはFRPの適用拡大につながるアプリケーション候補の一つです。
特にスクラップアンドビルドのモデルが限界に来ている以上、
補修という観点でFRPが建築物の中で活躍するという場面が多くなると予想されます。
その一方で、従来のコンクリート主体の建築技術に対してFRPが参入できる余地はまだあると考えます。
完全にコンクリート材と置換するというところまでFRPベースの建築設計技術が成熟すれば理想的ですが、そうでなくとも一部をFRPに置換できれば、例えば高層の建築物では上層部を軽くすることで、より高層の建造物や柱が少ないフロアを有する建物を作ることが可能になるかもしれません。
また、海沿いなど金属腐食が起こりやすいところでは腐食防止としてFRPの材料を活用することも可能でしょう。実際、海沿いに建つ灯台の材料にFRPを使うということが増えてきています。
最終的には今の建築設計技術が異方性を有するFRPにも適用されるようになり、FRPの物性を活かした構造設計ができるようになれば、FRPがより身近な材料として活躍することも可能になると思います。