FRPの濡れ性を改善する 接着プライマー SB1050
接着に関連する製品を中心に事業展開しているイギリスの化学メーカー、 Oxford Advanced Surfaces 。
エポキシやポリウレタンの接着剤も製品としては持ち合わせていますが、
どちらかというと Paints and Coating というカテゴリーで、
接着プライマー を主軸に持つ企業のようです。
プライマーの主力製品の一つが Onto™ というもの。
以下の動画に本製品の概要などが述べられています。
https://www.youtube.com/watch?v=4pOp4MBhjZU
これを見ると、明らかにプライマーによって接着性が改善しているということがわかります。
このプライマーはCFRPなどにも効果があるようで、
接着接合技術の求められるFRP業界では注目の製品です。
このような事業展開を行っている Oxford Advanced Surfaces が新製品を発表しました。
SB1050 という製品です。
これはプライマーの一種なのですが、表面の濡れ性に着目した製品のようです。
CFRPはもちろん、FRPのマトリックスの主力の一つであるポリアミド、ポリエチレンなどの幅広い高分子の表面濡れ性改善に効果があると述べています。
http://www.oxfordsurfaces.com/oas-launches-new-product-for-stronger-adhesive-bonding/
基本的にはブラシにより被接着体の表面に SB1050 を塗布し、
接着剤との濡れ性を改善することで結果的に接着力が改善するということです。
CFRPでは手研磨もなくすことができることで、量産での接着安定にも貢献できるとのこと。
FRPもそれ単体ではなかなか形にならず、
いくつかの異部品を接合するという場面も多くあると思います。
このような時に、接着というのが一つの重要な要因となることを考えれば、濡れ性を主軸にした新しい化学処理アプローチである SB1050 は今後の選択肢に入るかもしれません。
ここでFRP業界の方にとって切っても切れない異種材接合について少し述べてみたいと思います。
接着において大切な要素はいくつかありますが、その一つが SB1050 もコンセプトにしている濡れ性。
これは、接着成分と被接着体の表面が接触する「確率を上げる」という重要な役割があります。
もう一つは表面積。
弱い力であっても広い面積で接することができればマクロで接着力が発現することはイメージできるかもしれません。
表面を研磨するというのは、凹凸をつけてそこに接着剤をしみこませる「アンカー効果」もありますが、
そもそも、接着表面積を上げるという意味合いも強いです。
そして忘れてはいけないのは、材料のばらつき。
今回ご紹介したようなプライマーだけではなく、接着剤を使うのであれば接着剤というのは必ず「ばらつき」を持っています。
このばらつきを考慮しないまま、いくつかの試験データで設計許容値を決めるケースがあるようですが、これでは将来的な材料ロットのばらつきを無視していることになります。
回帰分析を応用し、将来的な材料ロットのばらつきを予測し、これを強度データの「範囲」として把握する。
このような設計思想が接着には重要です。
加えて圧力と温度も大切です。
きちんと表面処理(プライマーや研磨)がされている、接着剤も接触している、材料のばらつきも把握した。
この状況にあっても適した圧力で押し付け、適した温度で加熱、冷却を行わないと接着強度というのは大きく変化します。
接着プロセスでは圧力と温度が極めて重要であることを改めて認識していただきたいと思います。
最後に異種材接合では、被接着体によっても接着の難易度は変わるということを付け加えておきます。
当然ですが高分子であれば熱硬化性樹脂の方が一般的には接着性が高く、
熱可塑性樹脂の中でも極性基を持っているほうが接着性は高くなる傾向があります。
ところがそれとは異次元なのが「金属」との接着。
まず忘れてはいけないのは、接着剤は金属との接着はあまり得意ではないということです。
だからこそ、金属には化学処理や酸エッチング、プライマー処理などの重厚な前処理が一般的に行われているのです。
上述した観点も加味しながら、接着は「はがれるかもしれない」という前提のもと、どこかでは物理的に固定するなどして最終剥離を防ぐという安全策を講じておくことが重要であることに疑いの余地はありません。