CFRP製の軽量化 パビリオン
FRP自動積層機の大手の一社である KUKA 。
このKUKAが Stuttgart 大学にCFRP製の パビリオン 製作に一役買ったようです。
この パビリオン のコンセプトは
「クモの巣のように軽くて安定したもの」
とのこと。
これらのコンセプトでパビリオンを作ろうと考えたのは、
the Institute for Computational Design (ICD)並びに、 the Institute of Building Structures and Structural Design (ITKE)の従業員の方とのこと。
クモが水中に空気を取り込んだ巣を作ることをヒントにコンセプトの検証が進められました。
概要は以下の動画が良くまとまっています。
上記の動画で紹介されるパビリオンを見た時、CFRPの果たす役割が構造材というよりもデザインの一部である、ということを感じた方もいるかもしれません。
設計はクモの巣をベースに形状と繊維配向を決め、
その繊維積層を可能にする積層ロボットのパスを設定し、
実際に積層をしていくというステップを踏んでいます。
最外層にあるのは ETFE という テトラフルオロエチレン と ポリエチレン の共重合体である熱可塑性樹脂を用いています。
この樹脂は旭硝子が開発したものです。
http://www.fluon.jp/products/etfe/index.html
そしてその内側に48Kの炭素繊維を貼り付けていきます。
貼り付けるにあたっては繊維に予めエポキシ樹脂を含浸させ、
タック性を持たせたうえでETFEの内側にKUKAの積層装置にて指定した配向で積層させます。
この積層において最も肝となるのは積層に応じて変化するETFE外層の剛性に応じた積層押し付け圧力制御とのことです。
積層ヘッドの位置と押し付け圧力をリアルタイムで検知し、積層場所とその時の剛性、押し付け圧力を細かく制御するというトータル制御を導入したと書かれています。
本技術は今回のパビリオン積層に活用できるだけではなく、
それ以外の建築物、構造体の積層にも応用できると期待されています。
こうして、全長45kmにわたる炭素繊維を用い、表面積40m2、内面体積130m3、内寸の幅は7.5m、高さは4.5mという大型のパビリオンの積層ができたとのこと。
積層後の単位面積当たりの重さは 7kg/m2とのことです。
上述の内容に関する概要は以下のサイトで述べられています。
http://www.kuka-robotics.com/en/pressevents/news/NN_201508010_Carbon_fiber_pavillon.htm
今回の記事で読み取るべき内容として2点ほど挙げたいと思います。
まず一つは自然のものからヒントを得たというコンセプト。
身近なものからヒントを得るというのは様々な仕事を前に進めるうえで大切なことです。
天然物でもFRPに近いものは多く存在し、繊維を含む木材や竹などはその一例です。
最近の記事でもセルロースナノファイバーのお話をご紹介しました。
進化の過程で発展し、残ってきたということは自然の摂理で必要とされてきたということの裏付けでもあります。
このような身近のものを見る時の視点を大きく変えることで、
FRPを活用する全く別のもの、特にコンセプトが見えてくると考えます。
これに関連しますが、2点目としてはFRPを強化材というよりもデザインとして活用した点です。
FRPを使おうとすると、通常はFRPをできるだけ多く活用して軽くする、という所に視点がいきがちですが、FRPを強度を保持する構造部材として使う、という固定概念を超えていくアプローチがFRP拡大に必要とされるコンセプトです。
FRPの新たな活用方法を考える際の一助になれば幸いです。