はじめてのFRP – 複合材料 : Composites とは
今日の「はじめてのFRP」のコラムでは、 複合材料 ( Composites )というものについて改めて考えてみたいと思います。
今複合材料の中で最も期待されているものは、間違いなく炭素繊維強化プラスチックのCFRPです。
本ホームページを経由してご連絡をいただく企業様の実に9割近くがこのCFRPに関連する、
もしくはその業界に参入したいという方々であるというのが印象です。
そのくらい今、複合材料の中ではCFRPの注目度が上がっています。
唐突な質問かもしれませんが、そもそも複合材料( Composites )とは何でしょうか。
これは先日のセミナーでも聴講者の方々におききしたことです。
複合材料とは何か、という問いかけに即答できるという方は、
その素材に対してそれなりの知見をお持ちの方と推測します。
複合材料については色々な定義があるようですが、
以下のようなものが模範解答の一つといえるかもしれません。
回答例はいくつかありますが、一例として複合材料とは以下の特徴を有する、と考えることが一般的です。
– 物理的に異質で機械的に分離できる二種類以上の材料からできている。
– 特性が個々の素材より優れている、または個々の素材に無い特性を持つ。
これは、複合材料業界の名著である「複合材料活用辞典」にも書かれている内容です。
複合材料を分類する場合、様々な分け方がありますが代表的な分類方法としてマトリックスによって分けるというものがあります。
マトリックスで分ける場合、複合材料は主に以下の3つに分類されます。
1.PMC ( Polymer matrix composites)
2.MMC ( Metal matrix composites)
3.CMC ( Ceramics matrix composites)
PMCはPolymer、つまり高分子をマトリックスとしたものです。
高分子とは樹脂やゴムのことを言います。
(ゴムをマトリックスとする場合、RMC; Rubber Matrix Composites という方もいますが基本的には樹脂もゴムも「高分子( Polymer )」という枠組みで整理することが高分子界では普通です)
樹脂がマトリックスの複合材料の代表格はガラス繊維強化プラスチックのGFRP、
炭素繊維強化プラスチックのCFRPがあります。
ゴムがマトリックスの複合材料の代表格はタイヤや油圧ホース等ではないでしょうか。
MMCはその名の通り金属がマトリックスのものです。
一部の特殊用途での実績はありますが、そもそも均質材で物性も高い金属にわざわざ異物の繊維やフィラーを入れることはあまり好まれないことから、今の所あまり注目されていません。
何よりマトリックスに金属を用いているという時点で、
比重のメリットがないというのが決定的な弱点となっています。
ただし、軽量化を狙ってフィラーを混ぜるというMMCは今後注目されてくるかもしれません。
アルミにセラミックのフィラーを入れるという論文は存在しています。一例はこちらです。
その代わり、非常に高温になる金属溶融工程に耐えられるフィラーを注意深く選定し(上記の論文でもやはりセラミックが選定されています)、金属とフィラーとの間でそれなりの交互作用を発生させるといった材料コンセプトを考える必要はあります。
そして、セラミックスを繊維で強化するというCMCは20年以上前から盛んに研究されています。
これは耐熱性が高く、軽いというセラミックスの最大の特徴を活かしつつ、
弱点である「脆さ」を強化繊維で補おうという考えがその研究を後押ししてきました。
近年は量産を間近に控えた民需航空機エンジン向け技術としても注目されています。
CMCに関しては、こちらの記事で過去にご紹介しましたので合わせてご覧ください。
今日は複合材料をマトリックスによって分類した場合、
それぞれのグループの特徴について概要を述べてみました。
CFRPという近視点のみで議論するのではなく、
「CFRPが属するFRPとはどういうものがあるのか」
「FRPのさらに上位概念である複合材料 ( Composites )とはどのようなものなのか」
という基本議論に立ち返ることで、目の前の問題に対する解決策を見出すことができるかもしれません。