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天然繊維複合材料の 回転成形

2015-09-23

強化繊維を天然素材につかうFRPの総称 Green Composites 。

SPE ( Society of Plastics Engineers )の Plastics Engineeering section の定期刊行誌からのご紹介です。

http://www.plasticsengineering.org/

雑誌はこちらでも見ることができます。

http://read.nxtbook.com/wiley/plasticsengineering/julyaugust2015/plasticsprocessingequipment.html

今回ご紹介するのは、

” Rotational Molding of Polymer Composites Reinforced with Natural Fibers ”

という題名の記事ですが、マトリックス樹脂として主に PE ( Polyethylene、 ポリエチレン )、
強化繊維としては亜麻、楓、大麻などが紹介されています。

 

 

成形方法は回転成形

成形方法として主に紹介されているのは「 回転成形 ( rotomolding ) 」です。

回転する高温の金型内に材料(樹脂ペレットなど)を入れ、内部で溶融させながら樹脂を金型内壁に行き渡らせます。

均一に樹脂が行き渡った後、金型を冷却して脱型すれば形ができるという仕組みです。

恐らく社員教育用に作られた試作の回転成形工程説明動画が以下の所にあります。

 

 

回転成形のメリットは weld line が無いこと(脱型する必要があるため、parting lineは存在します)、低粘度の樹脂が行き渡ることができ、アンダーカットなどが無い状態で脱型することができれば複雑形状を形成することができる、加圧の必要がないため残留応力が少ない、投入する原料の量を変えることで成形物の厚みを変えられる、といったものが挙げられます。

当然デメリットもあって、成形に時間がかかる(上記の定期刊行誌によると約45から60分)とのことです。

下記の情報によると、北米での回転成形ビジネスは2009から2014にかけて今なお7.2%の成長があると言われており、回転成形自体は堅調な成長をしていると推測します。

情報元:P.J. Mooney. “Rotomolding on a Roll.” PlasticsEngineering, 70 (2014), 2-10.

技術的な内容を一部ご紹介します。

 

Wood Plasticを用いた回転成形

ご紹介するのは以下の文献概要です。

A. Raymond, D. Rodrigue. “Wood plastics composite produced by rotomolding.” Proceedings of the 71st Annual Technical Conference & Exhibition, Cincinnati, Ohio, USA, Society of Plastics Engineers (2013), 1589808.

この論文では楓を125から250μmのサイズに粉砕した微粒子を強化材(フィラー)として用いたようです。
投入量は 25 wt%上限まで添加。

マトリックス樹脂 は Linear Low Density Polyethylene 、LLDPEと呼ばれるリニアポリエチレンで、αオレインとポリエチレンを共重合させたものです。

またフィラーと樹脂の接着性を高めるため、フィラー側は水酸化ナトリウムによるアルカリ処理を行っており、さらにこのポリエチレンはマレイン酸修飾を行っています。

無水マレイン酸をグラフト処理したポリエチレンは MAPE ( Maleic anhydride grafted polyethylene )といわれ、フィラーや強化繊維との接着性改善に広く検討されている素材の一つです。

無水マレイン酸の構造式は以下の通りです。化学結合を形成するのに必要な官能基を有することがわかると思います。
(The image below is referred from http://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/sial/63200?lang=ja&region=JP .)

無水マレイン酸

このようにして作られたLLDPEをフィラーで強化したものは、
回転成形で成形したもので曲げ剛性が35%アップしたと述べられています。

回転成形は高速成形には向いていませんが、
複雑な形状を成形するにあたっては非常に有効なツールと考えます。

また Green Composite は素材の再利用という観点からも今後注目すべき素材になるでしょう。

 

ただし回転成形をFRPの成形方法として汎用的に用いるには注意が必要かもしれません。

やはりFRPは繊維にどのくらい樹脂を含浸できるのか、という所が勝負となります。

フィラーを混ぜるにしてもできれば一度繊維と樹脂が共存する状態で圧力をかけるということが重要です。

では、回転成形をFRPに使用するにはどうしたらいいのでしょうか。

 

答えの一つは、回転成形の前段階で繊維にマトリックス樹脂を含浸させるために加圧するということではないでしょうか。

ペレットにしても、マットにしても、その前段階で含浸をさせておけば回転成形でも樹脂と繊維の接着力のような相互作用が機能するのではないか、と推測します。

 

FRPの工程を考えるときにはいかにしてFRPの機能発現を実現させるのか、ということに注意しながら材料設計を行うことが肝要です。

今日は回転成形を軸に Green Composite の概要をご紹介しました。

 

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