東邦テナックスから Tenax® ITS50 の発表
帝人グループである東邦テナックスから新しいPAN系炭素繊維ラインナップが発表となりました。
Standard modulus type と彼らが分類する繊維ジャンルの中にあるUTSシリーズの派生として、
新たに Tenax® ITS50 を加えるとのことです。
この内容は以下のページで発表されています。
http://www.tohotenax-eu.com/en/news/details/artikel/tenaxR-its50-neue-filamentgarntype.html
Tenax® ITS50 の特徴はUTSシリーズと同等の5.1GPaの引張強度を維持しながら、
弾性率を10%向上させたということです。
航空機などに使われる Intermediate modulus type の方向に改質されたという理解でいいと思います。
東邦テナックスの炭素繊維ラインナップは以下の所で述べられています。
http://www.tohotenax.com/tenax/jp/products/pdf/st_property.pdf
プレスリリース上では高圧タンクなどの用途を考えているようです。
弾性率を上げて変形を小さくしたい、という意図が見て取れます。
この新製品は今週開催される Composite Europe で公開される予定となっています。
CFRPの最終破断強度を担う炭素繊維はCFRPの機械特性や物理特性を大きく支配する素材です。
一般的には強度が高い方がいいと言われていますが、
強度を高めようとすればするほど弾性率は上がる傾向になります。
これは強度を上げるには繊維をより延伸する必要がある、ということが主因の一つです。
ただ、アプリケーションによっては強度は上げたいが、弾性率を抑えたいというものもあります。
これは、衝撃を受けた時に耐えるというより、自らも変形することでその衝撃を吸収したい、
という設計意図から来ています。
航空宇宙を初め、この手のニーズは高いことから各社炭素繊維メーカーは、
弾性率を上げ過ぎずに強度を上げるという製品のラインナップにしのぎを削っています。
東邦テナックスでこれに該当するのはIMS60やIMS65、
東レの繊維でいえばT800SC、T1000GBなど、HexcelでいえばIM9などです。
今回は炭素繊維の一例をご紹介しましたが、
CFRPの設計をする際、どのような炭素繊維を選定するのかということをあらかじめ考えておくことは、
炭素繊維メーカーの方々と話す時の事前準備として重要であることを認識いただければ幸いです。