アイスホッケー スティックへのFRP適用
今日はFRP適用先の一つであるスポーツ分野についてお話をしてみたいと思います。
FRP適用先として早くから活性化しているスポーツ業界。
自動車レース最高峰のF1はもちろん、スキー、ゴルフ、釣り、ヨットなどにも使われています。
むしろFRP使用については、堅調に推移しているという表現が正しいかもしれません。
今日は多くのスポーツの中から
アイスホッケー
について取り上げてみたいと思います。
FRPを用いたアイスホッケースティックのメーカーとしての大手の一社として、 BAUER が挙げられます。
このBAUERは1927年設立の老舗で、アイスホッケー界ではかなり有名です。
一時期は Nike BAUER として活動していました。
設立当初から National Hockey League への設備提供をしており、
業界を知り尽くしている企業の一つなのかもしれません。
そんな BAUER が最新製品として売り出しているアイスホッケースティックが、
NEXUS
1N Composite STICK
https://www.bauer.com/player-ice-hockey-sticks/nexus/1n-composite-stick
です。
(The image above is referred from "https://www.bauer.com/player-ice-hockey-sticks/nexus/1n-composite-stick".)
上のURLで製品を見てみるとわかりますが、
アイスホッケーのパックを打つ瞬間、
スティックは大きくしなっています。
ゴルフなどと同じく、しなることで打ち込みエネルギーをため込み、
それを一気に対象物に伝えることで、
より早く、そして遠くに飛ばすことが可能となるコンセプトです。
ところが、しなるだけしなっては打点が安定しないため、
想定した通りにしならせることが重要となり、
この打点軌道の安定化にFRPの異方性を応用するとういうことが行われています。
使われている素材はCFRPベースで、素材提供は TeXtreme 。
そして今回の 1N composite Stick で売りとされている技術の一つが eLASTech です。
詳細はほとんど述べられていませんが、
使用寿命の延長を狙い、 Micro Nanotube を材料に添加し、
クラックや傷の進展を防ぐという技術のようです。
当然ながら材料の配向設計を最適化することにより、
固有のSweet spotを設定し、極めて高い精度でのショットを実現させると述べられています。
もちろん、使用する人の技術に由来する部分が大きいですが、
以下の動画にその一例が出ています。
この精度で打ち込まれては、守る方は大変ですね。
ここの記事でのポイントは技術というよりもマーケット規模かもしれません。
スポーツ、レジャー用途の炭素繊維使用量は今の所大きく拡大するとは考えにくい状況ですが、年1万トン弱での使用量が継続していくというのが大方の予想です。
つまり、景気に左右されにくく、一度プロ選手が使用すると、少量ながら使われ続けることになり、
何よりFRP業界に必須の、
「ブランド力による差別化」
へとつなげることができます。
少量でも堅実に流れ続けるということはこの業界では重要なことで、それを実現できるスポーツレジャー業界というのは今後も一つのキーワードになるのかもしれません。