Solvay が EPIC Polymer の LFT 事業を買収
破竹の勢いとはまさにこういうことでしょうか。
つい先日 Cytec を買収して驚いた矢先、次はドイツの EPIC Polymer の LFT ( Long Fiber Thermoplastics )技術の買収したと発表しました。
http://www.solvay.com/en/binaries/20151013-Solvay-EPIC-Polymers-JA-243932.pdf
EPIC Polymer のHPには特に何も書かれていませんでしたが、
HP内を色々調べてみると、「 Argonium® 」という建築資材向け軽量材料があり、
この素材の一部にFRP(いわゆる上記でいう LFT )が用いられているのではないかと考えます。
この製品に関する商品説明のURLを以下に添付します。
http://epicpolymer.com/wp-content/uploads/Epic-Product-Sheet-Argonium-Package.pdf
EPICは引き抜き成形を得意としており、ゴム製品の引き抜き成形はそれだけで一つの事業として成立するレベルであるとのこと。
Argonium® の説明の中にも、
「 Extruded Thatch Filament Polymerization (ETFP) 」
という技術が述べられており、FRPの形鋼(かたこう)などを提供しているようです。
Argonium® の比重は約1.66から1.93。
線膨張が非常に小さいことからCFRPであると推測されます。
引張強度は SUS 316 (ステンレス)と同程度で、 A6061-T6 (アルミ)の9倍。
引張り弾性率はSUSやアルミの4分の1から10分の1程度ですが、
曲げ弾性率となると5000分の1から1万分の1程度に低下することから、
強い異方性を持っています。
まさにFRPの特徴です。
以下に物性比較表を抜粋します。
(The image above is referred from http://epicpolymer.com/wp-content/uploads/Epic-Product-Sheet-Argonium-Package.pdf )
当然ながらFRPである場合、耐腐食性は抜群、また比強度としては金属の倍以上ですが、
実際の構造物に用いる場合は注意が必要なのは言うまでもありません。
主な用途は建築関連で、はしごなども含まれますが、建築物そのものも含まれる予定。
従来の建築思想(形状、支持方法など)を変えて挑まなければならないと考えます。
話を Solvay の買収に戻すと、今ヨーロッパでも注目される LFT と引き抜き成形技術の組み合わせは、
BMWで注目されたHP-RTMよりも量産性と実現性が高いということでトレンドとなっています。
この流れに遅れまい、というマンモスメーカーの意思を感じます。
化学メーカーであるSolvayがLFT技術を持ったことで、PPS、PAなどのLFTを拡張していくと明言しています。
PEEKなどはCytecが持っているため、まさにフルラインナップという所でしょう。
今後もFRP素材関連の世界にて、マンモスはさらにマンモスに、中小はより少量多品種試作へとベクトルを向けていくことになります。
中小の場合、マンモスと勝負するのは無謀すぎるため、少量多品種とフットワークの軽さを維持しながら 、
「設計、成形、検査」
といった川下に降りていく戦略が重要となってくるに違いありません。