Automated Dynamics 社が レーザー 加熱の Fiber placement 自動積層 装置発表
FRPの材料品質(機械特性、物理特性含む)として最も安定しているのは、樹脂を後から注入するRTMやインジェクションではなく、繊維に対して樹脂をあらかじめ含浸してある プリプレグ ( prepreg )であることは誰もが認める事実であります。
そしてこのプリプレグを 自動積層 するための装置が ファイバープレースメント ( Fiber Placement )です。
ファイバープレースメントでは、アメリカにある Automated Dynamics 社がパイオニアです。
以下のHPでも述べられていますが30年以上の歴史があるとのこと。
http://www.automateddynamics.com/
ファイバープレースメントの代表的な動画を以下に示します。
規定幅にテープカットされた材料を加熱、加圧をロボットアームで同時に行いながら積層している様子がわかります。
(The video information is referred from http://www.automateddynamics.com/ .)
日本においてはこちらもFRPでは老舗商社の 極東貿易株式会社 が代理店です。
http://www.kbk-shinsozai.com/automated-dynamics/
Automated Dynamics 社が採用してきた加熱方式はこれまで高温のトーチガスでした。
これをこのたび LIFT ( Long Island Forum for Technology )とともに開発してきた レーザー での ファイバープレースメント 装置を発表したというのが今回の記事です。
プレスリリースの記事は以下のところにあります。
ファイバープレースメントの肝となるのは温度と圧力の制御。
テーププリプレグを圧着させるコンパクションローラーの直前部分を高温にすることでマトリックス樹脂を局所的に溶融状態とし、そのままコンパクションローラーで押し付けることで積層工程を自動で完了させるというのが ファイバープレースメント のコンセプトといえます。
従来の Automated Dynamics 社のトーチガスでの融着ではガスの管理が大変だったと考えます。
なぜならばガスは消耗品でガスボンベの購入なども必要であるうえ、
ガスを高温にするために多くのエネルギーを消費する、
また局所的とはいえ解放空間への高温ガス放射は熱の拡散につながり、
本来加熱したくないところまで加熱させてしまうというデメリットもありました。
不必要な加熱は熱可塑熱硬化にかかわらずマトリックス樹脂の劣化につながるため、回避すべき状況といえるでしょう。
この加熱方式をレーザーにすることで、熱の拡散を防ぐことができるうえ、装置の管理がずっと楽になったようです。
今回の記事から見るべきポイントは何でしょうか。
1つは複雑形状の積層です。
ファイバープレースメント装置の画像を見ていただくとわかるように、かなり大型の装置です。
このヘッドのサイズは材料を積層するときに必要な稼働空間になりますので、ヘッドが大きいほど細かい形状の積層は困難となっていきます。
さらにヘッドが大きいほど重量が増してしまいます。
重量が増すということは Automated Dynamics 社のようなロボットアームでは片持ちで重いものを持たせることになるため、ロボット側の剛性も必要となります。
貧弱なロボットを使うとヘッドの重みでロボットがひずみ、積層精度が出なくなるためです。
このようにして積層対象のサイズと比較して、装置が大掛かりになる可能性は考えておかなくてはなりません。
ただし、一般的なファイバープレースメント装置の中では Automated Dynamics 社の装置はかなり小型である、ということは付け加えておきます。
同様にコンパクションローラー(材料を押し付けるローラー)のサイズも形状追従性と切っても切れない関係を持っています。
なぜならばコンパクションローラーのサイズよりも小さいRの部分に材料を押し付けて積層することは原理原則上できないからです。
2つ目はファイバープレースメントに使う材料のスリット加工です。
画像や写真を見てもらうとわかりますが、ファイバープレースメントに使うのは規定幅にカットされたテープです。
このテープのカットというものも実はかなりのノウハウが必要な加工の一つです。
というのも、樹脂が含浸された横幅のあるプリプレグから細いテープを切り出すときに厳密には繊維の張り具合というのが場所によって異なるからです。
このため、スリットされたテープのテンションを個別に管理しないとプリプレグの位置がずれて、本来カットしたい方向とは異なる方向にカットすることになってしまいます。
当然ながら幅が細いほどカットが難しくなっていきます。
その一方でテープ幅が狭いほど複雑な形状に対する積層追従性が高まるため、細幅のテープほど需要が高くなることは間違いありません。
(細いものがスリットできれば太いものもスリットできるため)
ファイバープレースメントを行おうとする時点で、スリット加工のめどが立っているのかということについて考えることが必要です。
このように、 自動化 や オートメーション というキーワードに飛びつくのではなく、装置の特徴と限界をあらかじめ把握しておくことが重要です。