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非接触 レーザースキャン形状測定装置

2015-12-16

私がFRPに関連するセミナーや著書の中でその重要性を必ず述べる「品質保証」。

顧問先でのコンサルティングでも必ず本点を重要視して話を進めるようにしています。


理由としては、


「全世界的に、FRPに関連する情報は素材と成形加工に偏っている」


という状況に危機感を感じているからです。

 

早速、本日のお話に行きたいと思います。


品質保証を担う柱は主に3つ。


1.文書規定と文書管理技術


2.寸法検査技術


3.非破壊検査技術

 

上記はどれも非常に重要なものですが、今日はこのうち 2.の寸法検査技術の一つとしてレーザースキャン形状測定装置についてご紹介します。


ご紹介するのは、FARO Edge ScanArm HD という製品です。


FARO®は先日のSAMPE JAPANにも出展しており、本製品について私も実物を拝見することができました。

外観写真は以下のようなものです。

無題
( The image above is referred from http://www.faro.com/ja-jp/products/metrology/faro-scanarm/overview

製品紹介については以下の所に動画もあります。
これを見るとイメージがわくのではないでしょうか。

 

https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=ZXwvXfEcwWE


この装置の最大の特徴は主に3点。


– ブルーレーザーの利用によるスキャニング精度向上のため、様々な素材のスキャンが可能

– 測定がハンディかつシンプル

– 表面処理やターゲットシールが必要ない

 

測定精度は+/-25μm、繰り返し精度は25μmとのこと。

測定レンジとして50μm、繰り返し精度25μmは2σベースとのことですので、統計学的にいうと正規分布前提で95.44%の確率でこの範囲でデータが分布するということを意味しています。


尚、上記の値は恐らく接触式の場合だと思います。

担当者の方とお話したときに、非接触の場合の測定精度は50μm程度である、とSAMPEでお会いした担当者の方はおっしゃっていました。


FARO Edge ScanArm HD の外観写真をみると、接触でも計測できるプローブが一体になっているのが見えると思います。

その他のスペック概要は以下の通りです。


– スキャンレンジ: 距離 115 – 230 m、幅 80 – 150 mm

– 解像度 2000 point/line

– 最小点間ピッチ 40μm
 
– スキャンレート 280 scan/sec

– レーザークラス クラス2M

いただいたカタログを見ると、測定範囲による仕様がいくつか用意され、
それに伴う精度変化もみられることが述べられています。


1.8m範囲を見られる仕様であれば、定点繰り返し精度、測定精度、はそれぞれ24μm、34μm。

3.7m範囲まで見ることができる仕様だと、同精度はそれぞれ64μm、91μmに変化しています。


今回のこの製品を通じて理解すべきポイントは何でしょうか。


まず一つはレーザースキャニングの走査精度が非常に高まったという利点です。

従来の赤色のレーザーではなく、私も使っているマウスにも適用されている青色レーザー(ブルーテック)を適用していることが主因だと考えられます。


CFRPのように黒色光沢物のレーザー反射は非常に困難であり、実際の量産現場で白色の着色をしないとレーザーがうまく反射しなかったという経験もあります。


もちろんCFRPであっても平面のような単純形状であれば問題ありませんが、FRPを適用する多くの製品が複雑形状であるのが一般的。


このような複雑形状に対するレーザー反射は非常に難しいのです。


青色レーザーを適用したことでこのような複雑形状のスキャニングも可能になったということは今後一つ大きな飛躍と考えるべきです。

 

またプローブのスキャニングは手探傷であることからデータが不足している箇所を集中的にスキャニングすることも可能で、データの欠落部分を最小化することが可能です。

 

このような利点がある一方、気を付けなくてはいけないこともあります。

 

まず一つが、検査を行う時に検査対象物をどのような状態で検査するのかを使用する側が決めなくてはいけない、ということです。

どこかに基準面を持ち、それを定盤のようなところにおいて検査できるのであれば問題ありませんが、
複雑形状で基準面では製品を安定して自立させられない場合は治具のようなものに固定しなくてはいけません。


もし治具に固定するとなると、場合によっては治具で保持する部分はスキャンできなくなります。


治具が検査被対象物に対して影を作ってしまうのです。


このような事態を避けるため、検査対象物を可能な限り基準面で自立できるようなものを設計する、
または複雑形状で基準面が小さい場合でも、それをオープンに保持できる治具を合わせて設計する。


そんな先を見据えた形状設計が肝要です。

 

加えて、公差設定にも注意が必要です。

 

上述の通り、設備仕様によっては測定精度が100μm相当になります。

 

検査精度が100μm程度なのに、同等の公差を設定するような図面を作成するのはかなりナンセンスです。

感覚的には図面公差よりも一桁は小さいところまで計測できる検査手法でなければ公差範囲での寸法判定はできません。

図面を作成する段階で、計測手法とその精度限界を考慮し、公差の設定とその公差に耐えられるクリアランス設定などを行うことが設計者としては重要です。

 

最後に注意すべき点。

 

それはデータの処理速度です。


本点については担当者の方とあまりお話ができておりませんが、検査をする、データを取得する、という以上に、


「得られたデータを処理して計算結果を算出するのにPCへの負荷が非常に大きい」


ということが良く起こります。

スキャニングは数分以内に終わったとしても、その結果をデータとして算出するのに何十分、場合によっては何時間もかかるといったことがあります。


先述の通りFARO Edge ScanArm HDはどのくらいのスピードで検査結果が表示されるのかはわかりませんが、データ処理時間ということをあらかじめ考慮しておくということも重要です。

 


今日は品質保証の中の3本柱の一つである形状検査についてご紹介しました。
 

 


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