バイク 向け CFRP 製新規サスペンション
バイク ( 自動二輪車 )の CFRP 製の車輪や サブフレーム を作る企業として知っている人は知っている BlackStone ( BST )が新しいコンセプトの サスペンション を発表しました。
※ BST のホームページは以下のところです。
http://blackstonetek.com/
この企業は バイク の世界では知られている企業のようです。
Honda 、 Yamaha 、 Suzuki といった日本メーカーだけでなく、Ducati 、BMW 、KTM 、 HARLEY-DAVIDSON といった欧州、北米向けの バイク 適合した CFRP 製の車輪を販売しています。
特に Ducati とのつながりは強いようです。
Monster series では3、4年前のモデルである Monster 696 や 1100EVO といった市販車向けにサブフレームを開発。
一般道通行の認定も取得したとのことです。
http://blackstonetek.com.winhost.wa.co.za/?page_id=567
( The image above is referred from http://blackstonetek.com.winhost.wa.co.za/?page_id=567 )
HPによると用いている材料は120℃硬化の高靭性エポキシ樹脂をマトリックスとした炭素繊維強化のプリプレグ。
耐熱性と機械特性が最も安定した「鉄板設定」というのが印象です。
成形もオートクレーブのようです。
この辺りの材料と成形方法の選定は保守的でいいと思います。
何度も述べているように、品質安定と安全性が第一ですので、
安く作ることに主眼を置いてお客様に何かあれば商品の存在価値がなくなってしまいます。
尚、 Ducati の Monster series の最新モデルである Monster 1200 を見ると一部、CFRP が使われているのがわかります。
( The images above are referred from http://www.ducati.com/media_gallery/monster_1200_r/1282535/index.do#MGI1282564 )
やはり Ducati といえば後輪のフレームが片側しかないのが特徴ですね。
実車をみるととてもスマートであることがわかると思います。
さて、そんな BST が JEC magazine Jan-Feb 2016 (No.102) で
「 Carbon fibre suspension part for motorcycle 」
という記事でコンセプト車を紹介しています。
( The image above is referred from http://www.nxtbook.fr/newpress/jeccomposites/jcm1601_102/index.php?startid=13 )
CFRP の比剛性の高さを活かし、サスペンション設計を大幅に見直し、ばね構造が無いものを発表しています。
このばねを無くしたことにより大幅な軽量化に加え、
「車高やチェーンの位置の調整が可能になり、設計自由度が上がった」
と述べられています。
非常に興味深い切り口です。
加えて、これまでのオートクレーブではない、いわゆる Out of Autoclave を成形方法として採用したと書かれています。
恐らくRTMかプレス成形にしたのではないかと想像します。
尚、マトリックス樹脂に関する情報は一切かかれていませんので熱可塑か熱硬化さえわかりませんが、
恐らく熱硬化性エポキシをベースにしたものであると推測します。
(120℃硬化のエポキシ相当の耐熱を熱可塑で実現しようとすると、PEEK以上のスーパーエンプラになるため、成形設備の加熱仕様を大きく変更しなくてはいけないため)
記事を読む限りこの BST は機械設計を得意としているようです。
今回の サスペンション設計 でも第一段階として破壊試験を行い、破壊モードの特定に時間をかけ、
中空という構造設計ができてきた段階でせん断変形の剛性と強度を高めるために shear web を入れるなど、FRPの特性ときちんと考えながら設計していることがわかります。
Shear web についてはこちらのHPがわかりやすいかと思います。
当然ながら バイク ですので、振動モードやヨーやねじりといった変形も加味して設計しているはずです。
私個人的には地面を動くものであれば、自動車よりも バイク の方が CFRP を活用できると考えています。
これは軽量化という CFRP 固有の特性がユーザーにダイレクトに伝わりやすいことに加え、上述した振動モード、剛性調整といった様々な運動へ与える影響を材料の観点から制御できるポテンシャルがあるからです。
日本ではバイク人口が減ったとはいえ、アジアを中心に バイク のニーズが高いのも事実。
途上国向けに安く売るということにくわえ、ユーザーの目線に立った技術の活用についても見直すことが重要なのかもしれません。