FRP業界での活躍を目指す企業のコンサルティングパートナー

韓国 自動車市場をにらんだ Quick Step FRP 量産技術適用契約

2016-04-08

FRP に力を入れている国の一つである 韓国 。


同じく日本と近い位置にいながら急成長する Quick Step Holdlding の本拠地がある オーストラリア 。

この比較的日本と近い位置にある2つの国の間で自動車向け量産技術を適用するという契約が交わされたとのことです。
http://clients2.weblink.com.au/news/pdf_1%5C01729222.pdf


韓国側で窓口になっているのは Korea Institute of Science and Technology のようです。

http://eng.kist.re.kr/kist_eng/main/

 

今回の 韓国 自動車業界との契約で Quick step が適用拡大を目指しているのが、 Resin Spray Transfer technology ( RST ) というもの。


これは FRP では最も古くから行われてきた技術の一つである スプレーレイアップ 技術の進化版といったところです。


2013年に以下のHPでも取り上げられています。

http://www.caradvice.com.au/245813/quickstep-fast-tracking-carbonfibre-resin-spray-transfer-technology/


このころは Audi 向けにやっていたようです。最近といえば最近ですが、際立って新しい技術ではないということがわかります。

 

RST は以下の Quick step のHPで主力技術の一つとして紹介されています。

http://www.quickstep.com.au/Capabilities/Resin-Spray-Transfer-for-Automotive-Manufacturing/RST-In-More-Detail


そしてコンセプト画像は以下の通りです。

比較的わかりやすいですね。

無題

( The image above is referred from http://www.quickstep.com.au/Capabilities/Resin-Spray-Transfer-for-Automotive-Manufacturing/RST-In-More-Detail


とはいえ、動いているものが最もわかりやすいので以下の動画をご紹介します。


国を挙げて自動車業界を盛り上げようとする韓国と該業界向けに技術提供を目指す Quick Step の目指す方向性が一致したとみるべきでしょう。


どうしてもFRPというと欧州が中心となりがちな昨今において、アジアオセアニアというご近所の国同士で協力関係が生まれるのは、FRP業界にとっては喜ばしいことです。

 

さて、今回発表された RST について技術的観点から見ていきたいと思います。

 


RST に関する記事や動画をみて気がついたことはありましたでしょうか。

 


私個人的には、やっぱりな、と思った部分があります。

 


実は、マトリックス樹脂に関する情報が出ていないのです。

 

熱硬化であれば一般的なエポキシといった化学名称が一切出てきていません。


これは、樹脂にも秘密があるとみて間違いはありません。

 


ここから先は予想ですが、それほど大げさなものではないと考えています。


恐らく用いられている樹脂はポリウレタン(または、その変性材)ではないかと考えています。


何故かというと、スプレーをして後加圧で含浸するためには低粘度であることが必須で、ポリウレタンは極めて低粘度を達成しやすい化学物質の一つだからです。


今年のJECでも数社がポリウレタンのスプレー含浸技術を発表していました。


あまり知られていませんが自動車業界ではガラス繊維との組み合わせで既に量産車に搭載され、販売されているケースもあります。


比較的安価(といっても高分子の中では高価です)で扱いやすい材料のようです。

尚、高分子の世界でいうとポリウレタンはかなり優秀な材料といえます。

エポキシのように耐熱性や機械特性が優れているというようなこれと言った特徴があるわけでは無いのですが、弱点が少ないのです。


FRPの熱硬化性マトリックス樹脂といえばエポキシや不飽和ポリエステルという固定概念を持っていると読み解けない内容だったかもしれません。

 


そしてもう一つ感じていただきたい内容があります。


特に動画に関してです。

 

何か違和感ありませんか。

 

前提としてこれが自動車の量産だとすると、ということを考慮してです。

 


私は明らかに違和感を覚えました。

 

それは、


「ロボットにこだわりすぎている」


ということです。


上記の画像がもちろんデモであるということはわかっています。


スプレー工程を自動化するというのもまだ理解できます。

これは、スプレー噴霧を均一にしないと樹脂の未含浸部分や過剰部分が出やすいからです。

 

しかし、ヘッドを何度か持ち替えてプリフォームされた繊維を金型の中に置くというのは明らかに違和感があります。

 

何故でしょうか。


自動化の大前提は、

「対象物が大型でないとメリットは出ない」

という所に由来しています。


FRP部品製造工程、検査工程についてロボットを使って自動化することですべての工程効率が上がるというのは”まやかし”です。


特にFRPのようにきめ細やかさが必要な作業において自動化にこだわるのは稚拙であるということを認識しなくてはなりません。

FRP業界でこのような考え(自動化の神格化)が浸透してしまったのは、海外を中心とした設備メーカーの宣伝戦略によるものが大きいというのが私の分析です。見方を変えると設備メーカーのビジネス戦略は優れているとも言えます。


私の知っているCFRP量産立ち上げの実体験を踏まえると、量産現場のすべてに対して自動化が向いているわけではない、というのが実感です。

例えば上記の Quick step の動画のプリフォームやコア材の設置は絶対に手作業のほうが早いです。

自動化の盲点については依然以下の記事でもご紹介したことがありますので合わせてご覧ください。

FRP戦略コラム – オートメーション の盲点


いずれにしてもアジアオセアニアで形成され始めた協業。


日本や日本企業も一緒にやってみることを考えてみてはいかがでしょうか。

Copyright(c) 2024 FRP consultant corporation All Rights Reserved.
-->