FRP戦略コラム – FRPの クラスター 制度はFRP業界の成長として機能するか
イギリスが本拠地の企業クラスター、 Composite UK が着実にメンバーを増やしているというニュースがJECのHPで紹介されています。
材料、設計、製造、品質といった幅広い領域にまたがるつながりが極めて強いFRPでは、異業種企業の協力が不可欠です。
そのため、北米は民間企業が、欧州は国が率先して異業種関連企業を集めるというクラスター制度を設けています。
Composite UK はイギリスが進めている該当組織の一つと考えます。
HPは以下の所になります。
私もたまに訪問し、情報を見させてもらうことがあります。
FRP業界のいくつかの企業もUKに工場や研究所を新設するケースもあり、国として企業誘致を進めていると感じています。
もちろん、これはUKに限らず世界中のFRP業界に対して熱心な国に共通する点です。
Composite UKでは 色々なことをやっており、特定のテーマに関するフォーラムや勉強会の開催、交流会の設定など、非常に有意義な組織として機能しているようです。
運用資金ですが一般的には参加企業がお金を出し合うのが一般的のようです。
下記が Composite UK の参加料金一例です。
( The image above is referred from https://compositesuk.co.uk/join-us/how-join )
いわゆるフォーマルな同好会のようなものでしょうか。
海外のクラスターに、日本企業でもPartnerとして参加するケースがあるときいています。
そして、日本においても類似のシステムを作ろうとしているようですがなかなか根付かないようです。
これは
「日本が北米、欧州に後れを取っているからだ」
と短絡的な意見をうかがうこともありますが私はそうは思いません。
どちらかというと、
「大手企業を中心とした日本企業は機密に対する意識が高い」
という「文化」が背景にあると思います。
そしてこれが根付いたのは、
「大手企業をトップとした分業体制が機能した」
という成功体験に由来しています。
大手企業が下請け企業に部品単位で丸投げし、それを購入して組み立てるというものづくり体制のことです。
これは日本がものづくりで世界を圧巻した非常に素晴らしいビジネスモデルの一つだと思っています。
ところがFRPはなぜかこの分業体制が機能しないのです。
この理由を明確に答えらえる方はなかなか居ないようですが、突き詰めていくとFRPが複数種の材料を組み合わせた
「複合材料である」
ということに由来していると考えます。
材料については繊維や編み方を知っていても、樹脂だけを知っていても不十分。
そしてこの材料の複雑性が以下のような波及効果を生み出します。
設計では、均質材の形状設計、均質材のシミュレーションだけを知っていても不十分。
製造では加工だけを知っていても、成形だけを知っていても不十分。
検査では形状検査だけ、非破壊検査だけを知っていても不十分。
つまり、上記のすべての概要は理解していなくてはいけません。
それぞれの分野でエキスパートは居ます。
ところが、幅広くみられる本当の意味でのFRPの設計者というのは世界中を見ても皆無です。
ここまでは技術の話をしていました。
これだけでもFRP業界が成長するために、実は不十分と言わざるを得ません。
FRP業界が育つには技術系の人間だけでなく、それをどのようにして売ってお金にするのかというビジネス感覚が必要です。
そして厄介なことに、
「ビジネスと技術の両方を理解していないとFRP業界というのは育たない」
というのが私の考えです。
ここまでくるとほとんどの方が該当外になってしまうのではないでしょうか。
クラスターはこれらの機能を集まることで担おうとしているのではないかとも考えられます。
ところが得てしてこの手のクラスターは技術に偏りすぎています。
たまにいるビジネス的な人は技術が全く分かっておらず、現実とかけ離れたビジネス戦略を立ててしまうケースも多いようです(一部のハイレベルなクラスターはこの限りではありません)。
ということでクラスター制度にも現段階ではまだまだ課題が多いのは事実。
このようなジレンマを超えるには何が必要か。
それはやはり、
「企業のHUBとなれるような人や組織」
ではないでしょうか。
いわゆるつなぎ合わせです。
お見合い結婚の仲介役のような立場かもしれません。
今の私の仕事はまさにこれに該当していると考えています。
一大産業への成長が期待されるFRP業界。
一刻も早くこの閉塞感を打破し、次の段階へ進みたいものです。
そのためには日本企業も北米や欧州の崇拝をやめ、自分たちの強みを軸としたビジネス戦略が必要なのかもしれません。