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津田駒工業 が低ひずみの連続成形装置を開発

2016-04-25

ATP( automated tape placement )やFRPスリッターの設備を設計、販売する 日本企業の雄 津田駒工業が連続成形装置の開発を進め、年内には試作品を発表するとのことです。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO99719290V10C16A4LB0000/?n_cid=SPTMG002

 

詳細は明らかにされていませんが、長尺部材をターゲットに熱成形した後に冷却を行うことで部材を成形するとのことから、熱可塑性のFRPを想定しているようです。


設備内にて加熱エリアと冷却エリアがわかれているため加熱、成形、冷却を連続的に行えることが特徴とのこと。


どのようなものが出てくるのか楽しみです。


機械業界、繊維業界で実績を積み重ねてきた北陸老舗企業が新規事業として本気で取り組まれているケースといえます。

以下のHPでも書かれているようなコンポジット機械事業として事業を推進されています。

http://www.tsudakoma.co.jp/composite/japanese/index.html


私も津田駒工業の該事業部の方々とはお話をさせていただいたことがありますが、
非常に真摯に取り組まれており技術力もさることながら、事業に対する熱意と顧客に対する柔軟な姿勢に敬服しております。


川上から川下までの一気通貫の情報がなかなか出回らない本業会において非常に苦労されていると考えます。


さて、今回津田駒工業が開発中の連続成形設備について考えるべきことは何でしょうか。

 

1.連続成形に必要な均一断面設計

本コラムでも何度も述べていますが、FRP業界で最も重要なのは全体を見渡せる設計です。

設計というのは図面を引く、強度計算をする、材料試験をするといった局所的な話をするのではなく、
市場で必要とされているものは何なのかという顧客目線とそれに基づいた製品コンセプト立案、
その製品にふさわしい材料の選定/設計という仕事が極めて重要です。

成形加工というのはこの材料と製品の間を結ぶ線です。


何故かFRP業界は成形加工だけに注力する傾向があり、原点である材料と最終製品に関して注意を払うことが少ない特異な文化があります。

今回の津田駒工業が開発中のものを活かすためには、


「可能な限り断面は均一であることが望ましい」


ということを設計者は最初に理解しなくてはいけません。

せっかく津田駒工業の設備がひずみの少ない連続成形ができるものを販売したとしても、これを適用する製品コンセプトとずれてしまっては宝の持ち腐れになってしまいます。


当然ながら複雑な断面も技術的には可能でしょう。


しかし、出発点として連続成形を活用するのであれば断面は可能な限り均一であることが望ましいということを、まず設計者が考えなくてはいけません。そうしないと、きわどいバランスで成形加工工程を設計することとなり、量産を視野に入れたものとしては好ましいとはいえません。

もちろん、これは一例であって、他にも多くのことを考えるべきであるというのは言うまでもありません。


2.熱可塑性樹脂のFRPで重要な冷却速度

結晶性ポリマーをベースとする熱可塑性FRP( FRTP : fiber reinforced thermoplastics )では、冷却速度にも注意を払う必要があります。


結晶化度によって機械特性、物理特性が大きく変化する材料の一つとしてポリブチレンテレフタレートなどがありますが、これに限らずFRPに採用される熱可塑性マトリックス樹脂の多くがポリアミドやエーテルケトンなどの結晶性ポリマーです。


今回津田駒が発表する設備を使うことで連続成形が可能になり、これが品質安定に効果的出るということは間違いなく期待できますが、適用する設計者は用いるFRP材料のマトリックス樹脂の種類、素材の厚み、繊維体積含有率(Vf)、プリプレグ(またはセミプレグ)の樹脂含浸度合いといったものを考慮しながら、材料の供給速度を検討するという姿勢がユーザーには求められます。


冷却後の材料を採取してDSC測定をするなどして、結晶化度やエンタルピー緩和の振る舞いに大きな変化はないか。

また、これらの違いによる材料の物性変化に影響はないか。


このようなことをきちんと考慮した上で工程の全体を考えるという広い視野が必要です。

 


いずれにしても日本企業がこのようなチャレンジングなことに挑戦する事業を進められていることに敬意を表したいと思います。

 

どうしてもFRP関連技術製品については海外のものを輸入するという考えが定着してしまっているようですが、日本にもこのような企業が存在することを知っていただきたいと思います。


そしてこれらの技術をきちんと活用できるFRP設計者が増えていくことを期待したいところです。


 

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