戦後日本のイノベーション100選に炭素繊維、 炭素繊維複合材 が選出
つい先日の朝日新聞の記事で発明協会が戦後日本のイノベーション100選」として、炭素繊維、 炭素繊維複合材 を選出したと発表しました。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12410808.html
発明協会のHPをみると、以下のところの45位にランキングされています。
http://koueki.jiii.or.jp/innovation100/senteikekka.php
このコラムをご覧の方は炭素繊維や樹脂を主にマトリックスとした複合材料が日本がリードしているということを十分にご存じかと考えます。
炭素繊維については、最近以下のコラムでもご紹介しましたが、進藤昭雄先生が発明されたのが出発点です。
最近、NEDOが生産性を大幅に高めた炭素繊維製造方法を開発したというのが上記の記事の内容です。
その中でも述べましたが、はやり前駆体のポリマーの構造を見直したというのが間違いなく大きいでしょう。
結局のところ化学構造を変える、という原点を変更するということこそがその後の製品価値や特性を大きく変えることに直結するということに疑いの余地はありません。
先日開催した化学メーカー向けの方に開催したセミナーでもこの辺りのお話をしたのですが、聴講者の方に何らかの情報として蓄積できたのであれば幸いです。
尚、今回の戦後日本のイノベーション100選の他のものを見てみると、やはり日本も素晴らしい技術国であるということがわかります。
FRP業界に関連するNC工作機械、産業用ロボット、全自動横編機なども挙げられています。
どれもいまだに最前線で活躍する技術や製品ですが、やや気がかりなのは最近のものは少ないということでしょうか。
これは日本が立ち遅れているという短絡的なお話ではありませんが、日本企業組織が硬直化しているのは一因ではないかと感じることは多いです。
FRP業界に限らずですが、日本企業は
「とりあえず様子見」
「リスクは取らない」
という姿勢が大手を中心に非常に強くなっています。
(FRP業界に限って言うと、この流れは日本だけでなく世界中で共通の動きといえます。)
恐らくですが今の大企業の上層部にいる方々は右肩上がりの成功体験で勝ち上がってきた方。
数字の「1」を2や3、場合によっては5などにするいわゆる「改善」を中心としたもので成功してきました。
ところがゼロから1を生み出すということをやった方が極めて少ないのです。
ゼロから1を生み出すということを行って一時代を築いた方は既に第一線を退いてしまっています。
ゼロから1を生み出すということは、当然ながらマーケットも読めない、リスクも多いというのが当然です。
リスクがあるからこそそこにビジネスチャンスがあるのです。
明らかに勝ち目のあるマーケットは間違いなく競合ひしめくレッドオーシャン。
コスト競争にさらされ薄利多売の名目でじり貧となっていくでしょう。
競合の少ない未開の地に人とお金をかけて、自分の代で失敗することを避けたいというのが今の大手企業の本音ではないかと感じています。
その一方で、非常に頼もしい流れを感じることもあります。
若手から中堅の方の危機感です。
40歳前後以下の年代の方は非常に危機感が強いのです。
年齢的には私と同世代です。
リスクを取って前に進むことの必要性を理解していらっしゃいます。
別のコラムでも書きましたが、権限委譲を進めこれらの方に決裁権を持たせてプロジェクトを動かす。
このような流れが出てくれば、FRP業界も大きく進展すると思います。
最後に付け加えるべきは、FRP業界についてはビジネス戦略だけでなく技術戦略の必要であるという事実です。
従来の金属材料をベースに発展してきた分業体制でFRP業界にて成果を出すことは絶対に無理です。
自ら、より川上業界や川下業界に手を広げ、幅広い視点から物事を突き詰めると製品コンセプトを明確化するという視点が不可欠なのです。
本点も忘れずにお考えいただきたいところです。