耐腐食用コーティング RELEST® Wind LEP S
ダウ・デュポンの発足により世界二位になったとはいえ、世界を代表する巨大化学メーカー BASF が風力発電の動翼コーティング材である RELEST® Wind LEP S を発表しました。
プレスリリースは以下のところで見ることができます。
http://www.basf-coatings.com/global/ecweb/en/content/press/press-releases/2016-06-13
近年は中国がけん引する風力発電業界。
古くからFRPが適用されてきた業界としても知られています。
今回発表された RELEST® Wind LEP S はポリウレタンベースのフィラー入りの材料であり、300 km/hもの高速で回転する動翼のリーディングエッジを雨、雪、雹、砂、熱、紫外線といった外的要因から、構造部材を守るという役割を果たすとのこと。
評価上では 570km/h レベルのスピードの雨でも該コーティングは問題なかったと述べられています。
(評価条件の詳細は不明)
通常、外部環境にさらされ続ける風力発電の動翼は上述した外的要因による劣化や損傷が絶えないため、
定期的または不定期の補修や点検が必要とのことです。
このコーティングは上述したような保守点検の頻度を下げる技術の一つとして、
今後も顧客のニーズに応えていくであろう、という旨の内容でプレスリリースは締めくくられています。
今回の記事の内容から考えるべきことは何でしょうか。
忘れられがちなのですが、
「 FRP はエロージョンに対して脆弱である」
ということです。
意外に思われる方もいるかもしれませんが、CFRP でも GFRP でもサンドブラストのような微粒粉末に対して削れやすい傾向があります。
同じマトリックス樹脂の場合、炭素繊維( CF )よりもガラス繊維( GF )のほうが削れやすい傾向があります。
今回 BASF より発表された RELEST® Wind LEP S は耐摩耗性の高い ポリウレタン をベースに、フィラーを添加することで機械的強度、物理特性を改善しており、一般的な感覚のコーティングよりも、より積極的にFRPの構造部材を保護する特性を有していると考えられます。
GFRP 、 CFRP に限らず外部環境に長時間さらされる、何らかの摺動部分付近で用いられる、といった場合には今回のコーティングに限らず、
「FRPはエロージョンに対してあまり強くない」
という事実を踏まえながら製品を設計するという思想が求められます。
いずれにしてもFRPに対して求められるのは市場からの信頼。
この信頼性を担保するためには、長期利用を想定した慎重な材料設計、形状設計が必要であることに疑いの余地はありません。
ご参考になれば幸いです。