中国華能集団が 洋上風力発電 を本格的に開始
中華人民共和国の国有電気事業企業である中国華能集団。
その中国華能集団が300MWの 洋上風力発電 を開始するための pile cushon cap piling(恐らく、洋上での発電機を固定するもの)の工事を開始したとのことです。
※参照プレスリリース
海底に固定するのではなく、浮体式洋上風力発電という形式もあるようです。
※ご参考
本記事後半でご紹介する洋上風力発電に関するウィキペディアによると「80mまでの水深では重力着底型構造物を利用する」と書かれています。
( The image is referred from https://islandpumpandtank.com/alternative-energy-2/the-war-to-build-americas-first-offshore-wind-farm/ )
投資額は約8億2千万 US$とかなり大掛かりです。
以下の記事で述べた時には風力発電産業は中国から徐々に離れていくのかと思いましたが、
やはり世界最大のマーケットだけありここは攻めに転じてきたようです。
※参考記事
これらの動きと直接かかわるところなのかは不明ですが、
中国華能集団は以下のように欧州企業と積極的に関係を持とうと動いていたようです。
http://www.chng.com.cn/eng/n75863/n75941/c1464476/content.html
当然ながら足元の需要減に悩む欧州企業(上記の場合は一例として Siemens です)にとって中国は未開拓の部分も残る魅力的なマーケットであることに疑いの余地はありません。
今回の記事から考えるべきポイントは何でしょうか。
CFRPの活用
今回の洋上風力発電で想定しているブレードの長さは75mと大型で、これまで中国国内で作られた風力発電ブレードと比較して最も長いもとなるとのこと。
多くはコストの問題からガラスが使われていますが、大型になればなるほど遠心力が発生した時の荷重が大きくなり、GFRPではもたなくなるケースがあります。
その一方で大きい方がブレードが回転した時に発生するトルクが大きくなるため発電量が大きくなる(発電容量をあらかじめ大きく設定できる)というメリットがあると考えます。
これらの課題を解決するため今でもCFRPを適用しようという動きは業界として大きく、またかなり大型で比較的形状がシンプルなため自動積層が有効であることから以下で紹介したようなNCFベースの自動積層検討なども盛んに行われています。
※参考記事
そしてブレードを大型にすることは発電容量の増加に直結するため炭素繊維を使用するコンセプトも明確です。
これらのニーズに対しCFRPが適用できるのかどうかについては注目の価値はあると考えます。
日本における洋上風力発電
洋上風力発電は周りに民家がないため低周波騒音のリスクが低く、海上は陸上よりも安定して風が吹いていることなどから風力発電に向いているといわれ、デンマークが発祥ながら日本も積極的な検討を行っています。
海洋生物や渡り鳥に与える悪影響も懸念されていますが、島国日本における新規主要エネルギー源としても注目されています。
洋上風力発電の概要についてはこちらのウィキペディアをご覧ください。
今日本ではNEDOが主体となり、福岡県北九州市沖と千葉県銚子沖で実証試験を進めています。
http://www.nedo.go.jp/fuusha/index.html
とはいえ、日本での洋上風力発電の開発には世界的に認められている部分もある一方、課題も多いようです。
詳細は以下の 石原 孟 教授のインタビューをご覧いただければと思いますが、
ポイントは以下のようなことのようです。
※石原 孟 教授インタビュー
- 欧州と異なり、洋上ですべての建設工程を終了させ、また保守も行うというアプローチを行っている
- 日本海域は波のうねりが激しい、または台風が多いなど欧州よりも厳しい環境にあるため、欧州のノウハウをそのまま活用することはできない
- 世界最高レベルの一機当たり7MWという風力発電機と同等の高さの洋上風況観測タワーの建築に成功
※参考動画
洋上で風力発電機を製造する様子
http://www.nedo.go.jp/fuusha/movieCg.html?bcpid=281638523002&bctid=281624403002
課題としては以下のことが述べられています。
- 港湾設備の整備、大型起重機船や作業船といったインフラ整備が急務で、民間企業だけでなく国の支援も必要
- 風力発電機が大型になった時に国内での開発、試験、製造を完結させる環境づくりが国際競争力増強に必要
- 欧州のように国が主体となって風力発電を産業として育成する姿勢とそれ相応の支援体制構築が重要
上記の通り課題がまだ見られる洋上風力発電ですが、
「日本の新国産エネルギー」
になるポテンシャルも持っています。
そして大型風力発電ブレードには間違いなくCFRPやGFRPが使われていくでしょう。
国産FRP材料の新たな展開先として重要な候補になると考えます。
エネルギー戦略は国民の日々の生活に直結する重要なものです。
お隣中国は本点について早い段階から目をつけ、積極的に動いています。
日本も従来エネルギー体制にこだわることなく前に進むべきでしょう。
FRPというと飛行機か自動車と考えがちですが、
より身近なものへの適用を今一度考えてみてはいかがでしょうか。