JEC world 2017 での注意点
今年も JEC world 2017 が開催されます。
FRP業界の人はほぼ全員がこの展示会の存在を知っており、
その価値に対する評価も基本的には高めです。
( The image above is referred from http://www.jeccomposites.com/events/jec-world-2017/about-the-event/presentation )
概要情報などは以下のHPからご確認いただければと思います。
http://www.jeccomposites.com/events/jec-world-2017
内容はともかくとしてもしここに参加される方がいる場合に、
こんな観点を持ちながら参加されるといいかもしれない、
という点について本コラム(FRP戦略コラム)で述べてみたいと思います。
自社の関連業界に偏らない
参加される場合、もちろん何らかの形でFRP業界に関わり合いを持っている、
または持とうとしている企業の方が多いと思います。
ここで陥りがちなのが、
「自社の関連業界への偏り」
です。
知っている企業、知っている技術、知っている業界の方が情報が収集しやすく、
話もしやすいのは事実。
一方で忘れてはいけないのはFRP業界は基本的に
「発展途上の業界」
であり、さらに関連業界で出てくるものは非常に範囲が狭い。
先日CESに関する記事でも言及しましたが、発展途上の業界に求められるのは、
「複合技術の融合」
です。
自分の分かる”殻”の中に閉じこもっていては何も始まりません。
むしろ
「これなんだろう、全く分からない」
という所に好奇心と勇気を持って飛び込んでいくことが重要となります。
自分のわかる範囲、自社に関連する業界に偏って動き回っても、
それは日本から高いお金をかけていく価値は半分以下になります。
自分や自社の殻をやぶり、積極的に未知の業界にアプローチをかけられるのがこの手の巨大展示会のメリットといえます。
受動の情報収集に偏らない
リスクを取ることに必要以上に敏感になっている昨今。
「ライバル企業の○○はこんな技術を発表していました」
という情報収集が必要以上にもてはやされるようになりました。
この手の情報収集を好む企業は日系企業に限らずFRP業界の企業に多いのが現状です。
当然ながらこの手の話は情報収集の域を出ず、
何より発展途上の業界で受動的になっている時点で何も生み出さない情報といえます。
もちろん、他社の動向を知ることに価値がないとは言いません。
しかし、
「他の会社がやっているので、そちらをやろう(検討しよう)」
という流される文化が少しでもある場合、この手の情報はむしろ百害あって一利なしです。
展示会で求められるのはこのような「受動」の情報収集ではなく、
情報「交換」である商談が重要です。
展示する側の目線になって考えればわかると思いますが、
「教えてください」
という情報を取ることだけを行ってくる相手と
「御社の製品と自社の製品を組み合わせこのようなものを作りたい」
と何らかの形で前進できる提案を含めた商談を持ってくる相手を比べた場合、色々話をしたいのは間違いなく後者です。
つまり相手から欲しい情報を取るにはこちらからもある程度情報を開示する必要があるのです。
まさに情報の呼び水といえます。
二言目には、
「これは機密情報ですので」
とか
「ここから先の詳細はお話しできませんが」
ではなく、可能な範囲で情報を開示して相手の興味を引かせ商談を前進させることが、
トータルで見るとビジネス成功の近道でありJECのような展示会で得られる収穫を大きくするキーポイントになります。
もちろん何でもかんでも開示していいわけではありませんが、
展示する側は非常に多くの企業を相手にしている状況を考慮した時、
「その中で一歩前へ出る、首一つ出るため」
にはこちら側の情報開示が非常に重要となるのは一理あると感じられるのではないでしょうか。
もしJECへ参加されるのであればどこまで情報を開示していいのか。
事前に社内で整合を取っておくことが重要といえます。
成形加工メーカー、試作メーカー、材料メーカーを訪問するにあたり
JECのような展示会で人気があるのは上記3業界。
それぞれを訪問するときのキーポイントをご説明します。
成形加工メーカー
最もわかりやすい業界のため毎年人気です。
ところがこの手の業界の話が役に立つ方というのは極めて限られており、
最終アプリケーションを生産するメーカー(Tier1等)であれば有益な情報になるかもしれません。
そして前提として、
「作りたい製品のきちんとした図面が手の中にある」
という状態であればとても有意義です。
基本的に製品というのは
「どのように作るのか」
という優先順位は低いのです。
それよりも
「必要とされる要件を満たすことができるのか」
の方が重要です。
そのため、図面がある製品を作る必要のあるメーカーに限られる、といっているのです。
とりあえず安く早く作る製法を調査したい、という動機で情報収集するということは否定しません。
しかしそのフェーズで情報収集するのであれば遠路はるばるフランスまで行かなくとも情報は取れる可能性も高いのです。
毎年色々な成形加工技術が発表されますが、本当の意味での大量生産技術としては未熟なものがほとんどです。
しかも海外企業の生産設備はパッケージ売りが多く、柔軟性も低い上、サポート体制も不十分なものが多いのです。
本点は一度留意いただいた方がいいかもしれません。
試作メーカー
こちらはうまく活用すれば有意義といえます。
それは、
「海外の方が情報が漏れにくい」
ためです。
欧州を中心にFRPの試作メーカーは多く存在しますが、彼らを活用するメリットは情報の閉鎖がやりやすいという所にあります。
日本で試作を行おうとするとどうしてもどこかでつながってしまう可能性があります。
できるところが現状では限られているからです(徐々に増えているようですが)。
細かいコンセプト検証を行うには細かい指示を出せるという意味で国内試作に圧倒的なアドバンテージがありますが、
ある程度試作ノウハウを蓄積した後で少量から中量試作であれば海外の方がメリットが出ます。
海外のサプライヤコントロールは時差や言葉の問題から骨が折れる部分が多いのも事実。
現地法人があればいいですが、ない場合はJECなどできっかけを作った後に、
別途打ち合わせを設定の上で議論を重ねて感触を確かめ、
試作をするサプライヤを選定するというスクリーニングが重要といえます。
つまりJECでは付き合いのできる相手なのか否かのスクリーニングをかける場、
そして話し合いをする価値のある企業であれば打ち合わせの事前調整をする場として活用することが一案です。
材料メーカー
プリプレグや樹脂もそうですが、添加剤も含まれます。
こちらはJECでの活用はメリットとデメリットがあります。
まずメリット側としては、
「JECに出展する海外の材料メーカーや日本の材料メーカーは材料規格をベースとした議論ができる可能性がある」
というところです。
当然ながら
「話を持っていく側が材料規格を作成できるスキルと実績がある」
のが前提になりますが、
JECには出展しない一般的な日本の材料メーカーではこの手の議論が苦手な場合が多いため、
JEC出展企業の方が圧倒的に有利です。
JECでは紙ベースで欲しい材料規格を持ち歩き、
それを提示しながらそれにふさわしい材料を持っているか否か、
という議論ができる相手か否かをスクリーニングするというのが典型的なアプローチの一つです。
機密保持が無い状態での議論ですので規格を渡すのではなく、その場では紙ベースでの議論になります。
「材料メーカーのカタログをみてほしいものを探す」
ではなく
「自分が必要な材料の規格をもち、それにあるものを材料メーカーに提案させる」
というスタンスが重要です。
この議論ができる相手なのか否か、そして規格に見合う材料を持ち合わせているのか否かについて議論をする。
そんなアプローチがJECでできれば非常に有意義になるでしょう。
デメリットとしては将来的な安定供給のリスクがある、というところです。
JECなどに展示する材料メーカーはやや特殊な材料を扱うメーカーも多く出ています。
仮にその材料を用いていいものができたとしても、その材料の供給が突然滞るリスクがあります。
こちらはどちらかというと購買契約などでリスク回避するというビジネス的な話が多くなるのかもしれませんが、
そのようなリスクが日本の一般的な企業よりも高い傾向があるということを理解した上で、
JECでは議論することが重要かもしれません。
いかがでしたでしょうか。
実際はもっと柔軟に様々な戦略を立てて望む必要がありますが、
一般的な部分だけを抜粋して書いてみました。
ご参考になれば幸いです。