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CFRP製品設計に必須 な材料試験の考え方とその方法のセミナーを踏まえて

2017-02-01

先日、CFRPの材料試験というトピックに特化し、 CFRP製品設計に必須 な 材料試験 の考え方とその方法 というセミナーの講師をやらせていただきました。


本セミナーには遠方からも含め比較的多くの方にご参加いただきました。
ご参加いただいた皆様に対し、この場をかりてお礼を申し上げます。


今回のセミナーを通じていくつか感じたことがあり、
それは本ブログをご覧の方にとっても参考になる部分もあると考えられたため、
抜粋してお伝えしようと思います。

 

材料試験の認識に関する「かい離」

今回のセミナーは

CFRPの材料試験

という、他のセミナーではあまり取り上げられることのないと想定されるテーマに特化したものでした。


そのためご参加いただいた方々は、

– CFRP製品を作られている方

– CFRPの設計をされている方

– CFRPの単体試験を行っている方

– CFRPのCAEを行っている方

といった、それなりに材料試験の必要性を感じられ、強い目的意識をもって参加されていると感じました。

このように参加された方々の目的意識が高いにもかかわらず、
一部共通して見られた感想が


「認識していた材料試験と実際に行うべき材料試験にはかい離がある」


というものでした。

これは今回のようなセミナーに限らず多くの場面(顧問先での打ち合わせ等)で私が直面する事実です。


上記の「かい離」という中には様々な観点のかい離(例えば試験品質、試験項目、試験方法、データの処理等)があり、それぞれについて大なり小なりかい離が感じられます。

 

かい離が生じる原因

では上記のようなかい離の生じる原因は何なのでしょうか。

いくつかの理由を想定しています。


まず一つ目が、

「形を作ることを急ぎ過ぎる」

ということです。


何度かこのコラムでも述べていますが、やはり原理証明のために形を作りたくなるのは事実。

企業の考え方としてそれが必要であるということも多く聞きます。


形を作って原理証明をすることはもちろん必要なフェーズはあります。


ただ、原理証明をしたとしても、必ず


「では、安定してその原理証明をできた製品を作り続けられるのか」


という疑問や不安に直面するのです。


こういうと製法の観点から


「成形品成形時の圧力や温度の管理」


といった方向に思考が流れるのが一般的ではないでしょうか。


もちろん、そのような観点も必要です。


ただ、忘れてはいけないのは、


「CFRPはバッチごとに材料特性にばらつきを有する」


という紛れもない事実です。


この材料固有のばらつきを把握するのには材料試験しかありません。

試作品での評価では製法によるばらつきが上乗せされてしまっているからです。

そしてかい離の生じるもう一つの理由が、


「材料の有する強い異方性」


です。


この異方性というものが材料試験の重要さを飛躍的に高め、
また扱う設計者を悩ませる原因でもあります。


例えば強度一つとってもUDであれば繊維方向と90°方向で数十倍異なります。

それに応じて物理特性の一つである弾性率も変化。

加えて「せん断」というモードの存在。

さらには「面内」と「面外」という考えが評価をさらに複雑にしていくのです。

見方によってはCFRPに限らずFRPという材料は


「荷重のかかる方向やその時のモードによって”別の材料に変化する”」


と考えることができます。


このような事実を踏まえ、材料試験は各荷重モードに対し丁寧かつ着実な評価が必須となります。


これをできていないと製品が思わぬところで破壊する、という最悪の事態に直結することとなります。

 

このかい離を埋めるために必要なこととは

正直なところ明快な答えを出すことはなかなか難しいと思っています。


なぜならば技術的な部分もさることながら、

「設計思想」

という考え方に関するウェイトが大きいためです。


ただかい離を埋めるための一つの考え方として、

「CFRPはagate材料などの一部例外を除き材料規格が存在しない」

という事実を再認識するというというものがあります。


金属を想定してみてください。


実際に金属でものづくりをしようとする場合、
SUS304など何らかの公的な材料規格に基づいたものを使っているのではないでしょうか。


どこの誰がどういう組成比で作ったのかもわからない合金をいきなり製品に使う人はいません。


もしそれでもその合金を使いたい場合、どうするでしょうか。


どのような組成で作られているのかといった

「材料要件」

を材料メーカーに要求するのではないでしょうか。


この話をFRPに置き換えてみればいいのです。


つまり使用したい材料に公的規格が無いのであれば

「材料要件」

を設定すればいいのです。


そして材料要件の中で、力学特性や物理特性として暫定要求値を決めるには


「材料試験を実施し、データを取得する」


ということが必要になります。


材料規格に記載するデータなので、適当に試験をしてデータを取得するわけにはいきません。

そのため、材料試験を行うにあたっては、材料そのものの保管要件から、実際に平板を作る、試験片を加工する、試験を行う、といった各工程に関する品質要求も行い、正式なデータを取る必要があります。

上記のような考え方がかい離している一つの要因を埋める一助となるかもしれません。

 

 

状況は各人によって異なるため当てはまる、当てはまらないはあると思いますが、
イメージは少し湧くかもしれません。

上記で述べたのは本当に一部の側面であるため、実際には多くの要素を考えなくてはいけません。


ただ一部の側面といえども何らかの参考にはなると思います。

FRPを扱う方が材料試験の意味合いや位置づけを再度考えていただくきっかけになれば幸いです。

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