FRP業界における 建築 への適用現状
今日のコラムではFRP業界における 建築 への適用現状を述べた後、
JECの初めての試みである、The Future of Composites in Construction についてご紹介したいと思います。
FRP業界において、再度の拡大が期待される建築業界。
これまでの建築業界においても貯水槽やバスタブなどの身近な製品でFRPは適用されてきました。
しかし近年の状況は少し変わってきているようです。
FRP適用における建築業界の位置付け
Overview of the global composites market (JEC発行)によると、2016年のFRP全体で金額ベースでのシェアは世界で14%。
このシェアは2021までも大きく変わらないと予想されています。
金額でいうと2016年が120億USドルでここ5年以上は成長してきており、
今後年5%程度の成長が継続されるというのが現在の見解のようです。
地域的にいうと中国が2021年までにシェア50%超(2016年現在35%)で業界をけん引し、
その次にアメリカが続くという構図が続くとのこと。
極端にいってしまうと中国とアメリカ以外は市場でいうと現在はそれほど大きくなく、
欧州や日本を初めとしたアジアでは大きな成長は見込めないというのが市場の見方のようです。
FRPの建築業界への拡大を目指すにあたって
業界内でもFRPを建築業界への適用を目指した動きが加速しています。
欧州を中心に検討が進んでいるのが Green Building という考え方です。
Green Buildingというと色々な考え方もありますが、
– 消費エネルギー
– 二酸化炭素排出
– 水の消費
– 固形廃棄物
といった観点に着目しているようです。
これを踏まえ、以下の点をコンセプトに設定しています。
a. マテリアルライフサイクル
耐腐食性の高い材料なので、メンテナンスが楽とのこと。
b. 高強度と高剛性
比強度比剛性の高い材料がメリットがあるとのこと。
c. 軽量材料
材料自体が軽いので、建築に必要なエネルギーが少なくて済むとのこと。
d. 形状自由度
成形条件が適したものであれば複雑な形状も成形できるため、
建築設計者の要望に柔軟に対応できるとのこと。
これらの考えを基本としながら市場の拡大を目指したい、
というのが業界の大まかな流れであるようです。
なぜ建築業界でFRPの適用が進まないのか
上記のような前向きな話と裏腹に、市場の成長を妨げる要因があるのも事実のようです。
何が阻害要因なのでしょうか。
諸説あるため断言はできませんが、以下のような要因があると考えます。
– 建築法の壁
– 厳しいコスト要求
– 異方性を考慮した設計知見の不足
建築法は日本だけでなく、欧州でも整備されており、
難燃を初めとした多くの制約がつくようです。
さらに不動産で上物価格があっという間に下落する日本を初め、
建材にお金をかけるというのはそもそも顧客ニーズとして高くないと予想されます。
加えて何よりFRPの高い異方性を考慮した設計は、
建築業界という高いレベルの設計知見が蓄積された業界であっても一筋縄ではいかないようです。
本記事を踏まえて
上記の状況や考え方を踏まえてどのようなことを考えなくてはいけないのでしょうか。
まず業界として目指さなくてはいけないのは
適用実績を積み重ねる
ということです。
いきなり大量でなくてもいい、それでも一度使ってもらうことで実績とそこでの課題を抽出することが第一歩です。
この実績をまず作る、という取り組みが世界的にやや弱いというのが個人的な印象です。
実績を踏まえた課題こそが製品の性能と価値を磨き上げるのです。
実績がないことには製品を高める機会さえ与えられないことになります。
この実績積み重ねにおける阻害主因の一つが建築法だと思っています。
決して建築法を否定するつもりはありません。
ただ、建築法が整備された国では取り組みにおいてスタートラインが本来の位置よりも大分後ろになる、
ということを覚悟しなくてはいけないというのが問題なのです。
そういう意味では一つの考え方として、
建築法が緩い、または未整備の国をターゲットにする、
というのが一つの戦略になるのかもしれません。
表題で紹介した The Future of Composites in Construction はそのようなチャンスはどこにあるのか、
そして何より実績を積み重ねるための第一歩をどのようにつかむのか、
ということを検証するのには良い場所なのかもしれません。
http://www.jeccomposites.com/events/the-future-of-composites-in-construction-2017
今回が第一回とのことで出展企業はそれほど多くないようですが、
このようなスタートアップ時期にどれだけスピーディーに取り組めるのか、
ということが世界中の企業に求められるスタンスなのかもしれません。
ご参考になれば幸いです。