FRP業界における デジタル技術 とハードとソフト融合の可能性
今日の FRP戦略コラム では、 ものづくり白書 からみる FRP と デジタル技術 ということについて考えてみたいと思います。
先日の メールマガジン 、FRPのプロが注目する「業界最新ニュース」 でもご紹介しましたが、
経済産業省からものづくり白書 2017 が発表され、
FRP業界における取組や課題について考えることの重要性について言及しました。
詳細は以下をご覧ください。
http://archives.mag2.com/0001643058/20170619093000000.html
上記のメールマガジンでは IoT をFRP業界での活用法とその盲点、
顧客に対するプロダクトアウトの姿勢が重要である、
といったことを書きました。
今日のFRP戦略コラムでは少し視点を変えてものづくり白書の中で述べられているFRP業界における デジタル技術 について考えてみたいと思います。
第四次産業革命とよばれている デジタル技術 を基本とした変化
ものづくり白書の中において 産業タイプ別の第四次産業革命への対応 という名称でデジタル技術への対応の戦略について述べられています。
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2017/honbun_pdf/pdf/honbun01_01_02.pdf
IoTもデジタル技術の一つですが、上記ではもっと幅広い視点で述べられている印象です。
製造業は日本のGDPの2割程度ですが、政府としては主事業の一つと認識しており、
今後も該事業の継続と発展のためには時代の流れにうまく乗っていくことが重要と述べられています。
そしてこのものづくり白書で非常に共感できる内容がいくつかありましたので、
以下に抜粋します。
– 優れたハードウェアを低コストで提供する視点だけでは戦略として不十分
– ハードウェアだけでは差別化をはかりにくくなりつつある
– 顧客の課題やニーズに応えるために何が求められるのかを考えることが重要
– 海外の製造業ではソフトウェア会社の買収や設立で利益拡大に向けた体制を整えつつある
上記の話は製造業に従事している方々の間では意識的、または無意識としても潜在的には認識されている事実であると思っています。
このような変化は加速度的に進行するものと考えられます。
その一方で上記のような変化を乗り越えるというアクションに対し、FRPは貢献ができると思っています。
どのようなことなのでしょうか。
ハードウェアとソフトウェアの融合を強く求められるFRP
FRP製品の研究開発において最重要なのは何でしょうか。
このような問いかけに対してよくいただく答えが、
– 量産性
– 低コスト
の2点です。
これらの視点が間違っているとは思いません。
重要であることは明確だからです。
ただし、上記の通り「最重要なのは何か」という問いに対する答えとしては間違っているというのが私の認識です。
では何が最重要なのかというかというと、私の認識では
製品のコンセプト
です。
ここでいうコンセプトというのは
「その製品で何を実現したいのか、何に貢献したいのか」
という
「製品の存在意義」
に関する考え方です。
そしてこの議論を突き詰めていくと行きつくのが
「なぜFRPを使わなくてはいけないのか」
という問いかけです。
この問いかけに「軽量化+α」のαを明確に応えられれば問題ありません。
αに低コスト化や量産性を入れているようでは検討不足です。
そのような文言が入るのであればFRPは極めて不利な材料である上、
そもそもFRPである必要がありません。
ではαとは何なのでしょうか。
このαに該当する考え方は色々ありますが、概念的な部分を言うと
「FRPによって達成したい機能性」
ということになります。
そしてこの機能性を実現する道筋の一つが
ハードウェアとソフトウェアの融合
ということになります。これは上述のものづくり白書でも述べられています。
FRPを前提にさらに具体的な例を示すと、例えばスマートマテリアル、つまり知能材料です。
何を持って知能というかはまちまちではありますが、
歪み、損傷、温度といった情報を収集する、
というのが一例です。
このようにして生み出される材料は一般的な構造材料ではなく機能材料になるため、
その材料である必要性ということを説明しやすくなります。
αを明確化できたものはコンセプトが明確化できたことと同じであり、
これによりFRP材料を適用する意義が生まれるのです。
この流れを作る一つの重要な考えこそがハードウェアとソフトウェアの融合といえます。
FRPはハードウェアとソフトウェアの有効に向いている数少ない材料
FRPも属する 複合材料 ということについて今一度考えてみます。
何度かコラムでも述べましたが、 複合材料 の定義とは
– 2種類以上の物理的に分離が可能な材料によって構成されている
– それぞれの構成材料が有する個別の特性よりも高い、またはそれぞれが有さない特性を発現する
の2点です。
ここでの議論で重要なのはFRPはあくまで
「2種類以上の材料で構成されている複合材料である」
ということです。
これはFRPが異方性やCAEのモデル構築、材料データ取得の難しさにつながる一方、
異なるものを組み合わせる
ということに対しては非常にむいている(どちらかというと存在における必要条件を満たしている)材料と見ることもできます。
材料を製造する段階で2種類以上の材料をどこかのタイミングで組み合わせるため、
このタイミングで新たな機能性を持たせるためのものを入れ込んで材料設計する、
ということに対する柔軟性が他の材料と比較し圧倒的に高いと考えます。
均質材料に対して何かを加えようとすると、
それは安定性のある材料に異物を入れてしまうイメージになるため、
材料本来の特性が低下する可能性があります。
本観点こそがものづくり白書でも言及されている第四次産業革命を切り抜けるために重要なものであり、FRPがその主役を担える可能性があります。
ハードウェアとソフトウェアの融合を果たしたFRP材料は第四次産業革命を乗り切るための強力な推進力となり、今後の飛躍に貢献できるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
日々の研究開発業務ではどうしてもわかりやすいコストや量産性に思考が向いてしまいがちですが、
より長期的な視点でこれから訪れる荒波をどのように乗り越え、そして主導権を握っていくのか、
という戦略が求められていくことは間違いありません。
既に海外ではこの手の動きを始めているという情報も入ってきています。
遅れを取らず、むしろ世界をけん引できるような位置に飛び出せるチャンスはまだあります。
FRPを一つの選択肢として、これから来る第四次産業革命を乗り切り、
業界の発展と次世代の方々の生活を維持発展することにつなげることに私も一個人として貢献したいと思います。