FRP戦略コラム ユーザー に近づくFRP材料メーカ
今日のFRP 戦略コラムでは「 ユーザーに近づくFRP材料メーカ 」という題目で、
近年のFRP業界川上企業の動きをご紹介しながら、
FRP業界で必要とされる戦略の一つについて考えてみたいと思います。
名古屋に続き欧州にR&D機能設置を急ぐ東レ
やはりFRP業界、特にCFRP関連で先陣を切るのは東レです。
CFRPに加え、樹脂、フィルムといった材料を、
どのようにして特性を発揮するのか、
ということを設計や評価試験支援を通じてユーザーをサポートする、
オートモーティブセンター欧州 ( AMCEU ) を設立したとのことです。
プレスリリース( 2017年10月17日 )はこちらで読むことができます。
http://cs2.toray.co.jp/news/toray/newsrrs01.nsf/0/AD0EF47E1F8866DB492581BC000AECA0
日経新聞にも「 東レ、欧州で車材料開発 」という題目で同日に記事が出ています。
紙面でも掲載されていました。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO22308230W7A011C1TJ2000/
東レは今から9年前の2008年に名古屋事業所内にオートモーティブセンター( AMC )を設立し、
早い段階から顧客向けのアプローチを続けてきたようです。
私が様々な場面でお話しするより以前に、
東レくらいの大きな企業が上記の動きを続けてきたことは、
状況が昔からあまり変化していないという閉塞感の裏返しと見ることもできます。
オートモーティブセンター欧州( AMCEU ) の効果は
AMCEUはCFRPだけに限らず、自動車を主顧客に樹脂やフィルムに関連したアプリケーション支援業務を行うところのようです。
先だって名古屋で設立された名古屋の AMC の効果もあり、
売上伸び率約10%(2014から2016年度)を達成したとのこと。
この中でどのくらいがCFRP関連かはわかりませんが、
東レの主力製品である樹脂やフィルムの売上も伸びているのが実情のようです。
この効果もあってか、上述の AMCEU の設立発表(2017年10月17日)と同時に、
東レの株価は前日比10%程度上昇し、市場でも好感を持って迎えられています。
( The information above is referred from https://finance.yahoo.co.jp/ )
もちろん昨今の官製相場の影響も大きいかもしれませんが、
AMCEU の設立も好適材料として認識されたとみていいと思います。
攻めのイメージの強い東レは今後もFRP業界に限らず、
化学業界の新しい戦略を持つ企業として世界規模で注目されていくと考えられます。
川上からユーザー(川下)へ、そして川中、川下から川上への歩み寄り
私が本HPのコラムや講演で川下側へのアプローチの必要性をお話しすることは多いですが、
それを既に始めているということから、
現場ではただ物を売るというスタイルでは成り立たないのではないか、
という危機感があったものと推測します。
そして同様のロジックは川中や川下にいる企業にも当てはまり、
このような位置に居る企業はより川上側にアプローチできるよう、
成形加工や材料に関する知見を習得することが求められているのです。
徐々に川上側から川下側へのアプローチは始まっていると感じています。
同じように川中や川下側の企業がより川上側にアプローチをするということを率先することで、
両者のかけた橋がどこかでつながることで、
コストや生産性といったわかりやすいところではなく、
どのようにして新しいものを生み出すかという機能性を主体とした、
本来あるべき技術論ができるようになると考えます。
この話の流れはアプリケーション先として自動車に限ったことでは無く、汎用性が高い考え方であることもここで付け加えておきます。
大切なのは「具体的なアクション」が何なのかをよく吟味すること
上記のようなユーザー(川下)や川上へのアプローチは徐々に私の周りでは増え始めています。
自社内での検討の上でそのような動きを始めている企業はもちろん、
中には本コラムをご覧になった企業や私の講演を聴講された企業の方がアプローチを始めているケースもあります。
当然ながら現在のクライアント企業でも特に新規事業立ち上げや売り上げが伸び悩む製品の拡販戦略について、同様の指導を行っています。
しかし、詳細については方向性がずれていることもあるので要注意です。
よくあるパターンが、
?ユーザー(顧客)がそれほど望んでいないところに力を注いでいる
– 必要以上に深掘りしてしまい、マンパワーが極端に不足している
というものです。
機密文化が醸成されてきた日本ではユーザーの要望が時により不明瞭なことも多く、
ある程度予想しながらユーザー側の要望への近づくアプローチが必要となります。
この時にアプローチがずれていると、せっかく自社に新たな機能を持たせたのに売り上げにつながらないということも多々あります。
そのため、ここは顧客目線をよく理解した第三者目線が必須となります。
同様に必要以上に深掘りするケースもよくあります。
アカデミックでは別ですが、産業界で求められる技術評価は基本に忠実に、現物最重視で進めるのが鉄則です。
この鉄則がわからない故、必要以上に深掘りをしてしまい、
実用性があまりない機能性を構築しようとしていた(していた)企業もあります。
以上の通り、ユーザーへの歩み寄りは大まかな方向性という意味では浸透してきていますが、
具体的なアクションに近づくほど何をやればいいのかわからない、深掘りするほどマンパワーが足りない、
という泥沼にはまるケースが多い事には注意が必要です。
社内外のリソースや情報をどのように活用していくのか。
FRP業界での事業拡大に必須の戦略と、何よりそれに向けた
的を得た具体的なアクション
が強く求められる時期なのかもしれません。